第20話 たぷたぷ

 たぷん、と水音が聞こえた。

 近づくと、それは大きな水の塊だった。大きな水の塊は、重力を無視して宙に浮かんでいる。中の魚が一匹、ばしゃりと跳ねた。

 水の塊に指先を伸ばす。つつくように指先を水の中へ入れると、ひんやりとした冷たさが伝わってくる。

 不意に、水の塊がゆらゆらと大きく揺れだした。中の魚もばちゃばちゃと慌てているように見える。

 ついに水の塊は弾け、辺りに魚が散らばった。

 そこで、パチリと目を覚ました。

「……変な夢」

「起きた? 熱は大丈夫かい」

 ナツメさんの声に、ゆっくりと体を起こす。額に手を当てるが、熱は下がったようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る