第82話 開発部
エレベーターに乗り、私たちは開発部へと案内された。
フロア内は騒然としていて、中の人達は、部外者である私たちが来ても見向きもせず、電話対応をしたり、せわしくなくフロア内をうろうろとしていた。
まぁ、事態が事態だし、対応に追われてるよな……。
「ちょ、ちょっと待ってください! い、今から渡すものを……きゃあ!?」
下山さんは何かを取りに行こうとしたが……うろうろしていた同じ部署の人にぶつかり、転倒しそうになった。
咄嗟に2人を私と純ちゃんが支えた。
「あ、すみません! ちょ、ちょっと急いでるんで!」
「あ、はい、お気をつけて」
私が支えた人は携帯を片手にフロアの奥へと向かった。
一方で……
「大丈夫ですか?」
「あ、はははははは、はい……」
下山さんは純ちゃんが支えていた。
下山さんはそんな純ちゃんを見て……顔を真っ赤にしていた。
「あ、と、とりあえず! 用意するので、あ、あそこの応接室までお願いします! あ、案内できなくてすみません!」
下山さんは掌で、「応接室」と書いてある扉を指した。
まぁ、フロアがこんなんじゃ、しょうがないよね。
私たちは応接室へと向かい、下山さんが来るのを待った。
……しばらくすると、下山さんが沢山の資料と……アタッシュケースを持ってきた。
「お、お待たせしました……の、飲み物も……」
「あ、ありがとうございます……」
「お、おかまいなく……」
下山さんは持っていたものを机にドサッと乗せ、ポケットから缶のエナジードリンクを三本取り出した。
飲まないわけにもいかないので、いただくことにした。
「それで……渡したいものとは?」
「は、はい! ま、まずは、これです!」
そう言うと、下山さんは、アタッシュケースを弄り始めた……。
「あ、あれ? 鍵の……ば、番号……なんだったっけ?」
「ちょ、ちょっと……」
いやいや、そこはちゃんと覚えててよ……。
「あ! 思い出した!!」
「うおお!?」
「あ、す、すみません……い、今開けますね……」
下山さんはアタッシュケースを開け……中身を見せてきた。
その中身は……。
「こ、これ……」
腕輪と……携帯電話……しかも、私の奴と瓜二つ……。
「は、はははははは、はい! バーチャルチェンジャー……井上さんのやつです!」
「ぼ、僕の?」
なんと……純ちゃんの分のバーチャルチェンジャーだった。
え? ってことは、純ちゃんもVtuberに? ていうかアバター持ってたっけ?
そんな疑問を解決するかの如く、下山さんは資料を取り出した。
「こ、こここここここここ、これが、井上さんのアバターです!」
そう言って見せてきた資料には……全身赤い鋼鉄で覆われた……まるでアメコミのヒーローみたいなスーツに、フチなしのゴーグルサングラスを付けたカッコいい赤毛の人物が描かれていた。
これ……純ちゃん?
「か、かっこいい……」
私は、思ったことをつい口にしてしまった。
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