第80話 電話
「……あれ?」
食事を終え食器を流しに持っていくと、突然、携帯から着信音が鳴った。
画面を見てみると……下山さんだった。
「……美羽さん?」
「あ、ごめんね、ちょっと電話……」
「……誰からです?」
「センテンドーの人だよ、開発部の、ほら、この間花火職人の力くれた人」
「……それって、男の人ですか? 女の人ですか?」
「な、なに? 突然……女の人だけど?」
「ふーん……」
純ちゃんは……疑いの目で私を見てきた。
えぇ……もしかして、ジェラシー?
「別に仕事の人だし何でもないよ、電話出てもいい?」
「べ、別にって何ですか!」
「な、なに怒ってるの?」
「ちょっと貸してください!」
「え、えぇ!?」
純ちゃんは私の携帯を奪い取り……応答してしまった……スピーカーフォンで。
『あ、も、もしもし? し、下山ですけど……』
「こんにちは、下山さん、初めまして、井上純です」
『い、いいいいいいいいいい、井上さん!? ほ、本物ですか!?』
電話口の下山さんは、明らかに動揺していた。
そ、そこまで驚く? いや、確かに純ちゃんは有名人だけどさ……仮にも自分ん所の会社の公式配信者でしょ?
「はーい、そうですよ、井上純でーす」
純ちゃんも純ちゃんで、ひきつった笑顔で自己紹介した。
顔は向こうには見えていないであろうが、声からして機嫌が悪そうなのはよくわかった。
これ下山さんも嫌な思いするでしょ……。
『えぇ!? ほ、ほんものぉ!? ど、どうしよう……』
……あれ? なんか反応違うっぽい?
なんか、純ちゃんにも用があるのかな?
『あ、あの……も、もももももも、百地美羽さんは……』
「私ならここにいますよ、下山さん」
『あ、ちょ、ちょちょちょちょ、ちょうどいいです! あ、あの……今すぐテレビつけてください!』
「テレビ?」
下山さんの声を聞き、純ちゃんはテレビの電源を入れた。
テレビの画面の中では、キャスターが慌てて原稿用紙を用意していた。
『そ、速報です! さ、先程、政府がセンテンドーが開発したダンジョン用の兵器を承認しましたが……センテンドー本社ビルが、現在巨大なダンジョンに変貌しているとのことです! センテンドー東京支社は「連絡が付かない」とのことです!』
……え? あの私が付けていたものと似た腕輪を承認して……それと同時に、本社がダンジョンに変貌?
「これ、どういうことですか?」
『わ、私も聞きたいぐらいですよぉ……』
どうやら下山さんも事態の収拾に追いついていないようだ。
『と、とりあえず! わ、わわわわわ、渡したいものがあるので! あ、あああ、あの! 東京支社まで来ていただけますか!?』
「東京支社?」
い、今? 渡したいものって……なんだろう?
「……渡したいもの?」
「じゅ、純ちゃん?」
なんか純ちゃん……機嫌悪そう。
「それってつまり……プレゼントってことですよね? しかも、美羽さんに……これって……なんか、面白くないですね」
「いや、純ちゃん? そんなロマンチックなものじゃないからね?」
やっぱり純ちゃん、ところどころ子どもっぽいところあるよね……ま、そこがかわいいところなんだけどさ。
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