第35話 ZEKKYOU
「さぁて! 最初はこれ! 『ZEKKYOU』です!」
入場ゲートを潜り、最初に向かったのはZEKKYOUというバイク型のジェットコースターだ。
「このコースターはセンテンドーランドの中でも最も新しいアトラクション! バイク型のコースターに乗り込んで、前後に動く激しいコースターです!」
「み、美羽さん……これを最初に?」
純ちゃんは怯える子どものように、私の腕を掴んでいた。
コースターの説明にビビっているようだが、心配はいらない、何故なら……
「純ちゃん! 大丈夫だよ! このコースターは、『この施設の中では』一番楽だから!」
「あくまでこの中ではですよね!?」
そうだ、このコースターは、『センテンドーランドの中では』楽な方だ。
スピードも高低差もカーブも、他のコースターと比べたら少ない方である……だからと言ってジェットコースター慣れをしていない人にとってはつらいだろうが。
「さぁ純ちゃん! 行くよ!」
「は、はい……」
私は青ざめた顔の純ちゃんを引っ張り、アトラクションの中へと入っていった。
『これ乗ったことあるけど普通に辛い』
『このコースター結構楽しいよ、ちょっと物足りないけど』
☆
人ごみも無く、スカスカの通路を通り抜け、私たちはスタッフさんから安全対策を聞き、コースターの前へと歩き出した。
「それでは、持ち物は全てロッカーに預けてくださーい!」
係員さんが私たちにそう呼び込んだ。
も、持ち物かぁ……。
「美羽さんは持ち物とか、大丈夫ですか?」
「そ、そうだね、外せる装備は外しておかないと……」
携帯を操作し、刀やその他装飾品を外した。
そして……覚悟を決め、バイクへと乗り込んだ。
「どう? 純ちゃん……怖い?」
「……」
純ちゃんはただただ正面を見て、沈黙していた。
どうやら相当緊張しているらしい。
『バイクにまたがる純様カッコいい!』
『返事が無い、ただの屍のようだ』
『イノジュンびびりすぎて何とも言えない状況になってて笑う』
コメント欄は純ちゃんを心配する声、イジる声で埋まっていた。
……なんか純ちゃんがかわいそうに見えてきた……これじゃあ配信にならないから、なんとか元気付けてあげよう。
「……大丈夫だよ、純ちゃん」
「……美羽さん?」
私は手を伸ばして、純ちゃんの片手を握りしめた。
「配信前に言ったでしょ? ……今日はずっと一緒だって」
「……」
「どんなことになっても……ずっと一緒だからね、純ちゃん」
「……はい!」
純ちゃんは私の言葉を聞くと……いつもの満面の笑みを見せてくれた。
『ずっと一緒!?』
『これもう告白だろ』
『配信前に告白したのか』
『やっぱミウジュンなのか?』
……どうしよう、コメント欄がまたもそっちの方向に行ってしまっている。
「いや、違うからね!? 別に私たちは……」
『それでは、ZEKKYOU体験スタート!!』
否定しようとしたその時、掛け声と共にバイクが動き出した。
咄嗟に私はハンドルを握りしめ、安全な体制を取った。
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