第30話 純の過去 3

「実は……いつものようにダンジョンを探索していたら、行動を共にしていた隊員が負傷して、その人の救護をしていたんです、そしたら……モンスターの大群に襲われてしまって……」

「そ、それは……」

「全てはダンジョンを甘く見ていた結果です、なるべくしてなったのでしょう」

「いやいや……」


 純ちゃんは昔を懐かしむような笑顔で過去を語った。

 想像するだけでも恐ろしい……私だったら、正気でいられないかもしれない。

 純ちゃん今は笑顔だけど当時はかなり辛かったでしょ……。


『過酷すぎる……』

『やばい、言葉が出ない……』

『純様……その後どうなったの?』


 コメント欄も騒然となり、ゆっくりながらも、コメント欄が様々な言葉で埋まっていった。


「……幸い、死者は出なかったんですが、その時思ったんです……自分の無力さ、ダンジョンの過酷さを……」

「……」

「それで、考えたんです。どうやったらダンジョンの過酷さを伝えられるのか、どうやったら自分自身が成長できるのかを……」

「それで……ダンジョン配信を?」

「はい、配信をすれば、リアルタイムでダンジョンの過酷さを知ることができるし、戦い方を第三者目線でアドバイスしていただける……まさにぴったりだと思ったんです」

「なるほど……」


 ダンジョン配信って勝手なイメージで、ゲーム実況の延長線みたいな感じだと考えていた。

 でも、それだけじゃない……そんな考えもあるんだ。


「それで、今はこうして、色んな人に見てもらえる、みんな喜んでくれる……少し臨んだものとは違うかもしれないけれど、でも、まぁ今はこれでいいかなって感じです!」

『泣けるなぁ……』

『イノジュン……』

『純様にそんな過去が…… ¥5000』

『貴重なお話をありがとう NT$10』


 臨んだものとは違う、でもこれでいい……か。

 そういえば私……そういう考え、しなくなっていったような気がする。


「純ちゃんのそういう考え方、すっごく好きだな」


 私は思ったことをそのまま口にした。


『え? 今好きって?』

『【速報】 百地美羽、井上純に告白』

『今の聞いたぞ、早く付き合え』

『美羽純TSKR』


 ……え? なんでコメント欄こんなに盛り上がってるの?


「え、美羽さん、い、今好きって……」


 純ちゃんは……顔を真っ赤にして、目を泳がせていた。

 あ、ま、まさか……。


「い、いや純ちゃん!? い、今のはね! そういう意味じゃなくて、単純に純ちゃんの考え方が良いなぁってそういう意味で……」

「あ、そ、そうですよね! い、いやぁ、僕ったらなんて勘違いを……すみません……」

「い、いや、謝ることないからね!?」


 いけないいけない……なんか変な雰囲気になってきた。


『尊い……ありがとう…… ¥500』

『百合っていいですね ¥3000』

『愛とは素晴らしいものだね ¥5000』

『なんかいいですね。 ₩50000』

『THIS IS TSKR $20』


 コメント欄が虹色になっている……視聴者的には美味しいようだが、私は恥ずかしくてたまらない。

 視聴者には申し訳ないが、流れを変えよう……。


「い、行こう純ちゃん! 早く先へ!」

「あ、はい!」


 私たちは立ち上がり、先へと進んだ。


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