第29話 純の過去 2
「それで、今みたいに髪を短くしたりとか、男性っぽいファッションしたりとかしてみたんです、でも……そういう風にしてるとますます自分が分からなくなっちゃって……それで、ある日、そのことをとある人に相談したんです」
「とある人?」
それって……誰だろう?
「そしたら、その人はこう言ってくれたんです、『性別とかどうでもよくない? ただ他の人と違うってだけで、それは貴方の個性だと思う』って、その言葉で元気が出て……」
「おお……」
その人、良いこと言うなぁ。
「それで吹っ切れた僕は、ずっと大好きだったヒーロー番組とか自分が今までやってきたことを思い返してみて……『誰かを救える存在になりたい』って思うようになったんです」
「誰かを救う?」
「はい! それで、お母さんみたいな自衛隊員になろうって決めて、高校を卒業して、そのまま自衛隊に入ったんです」
「おお……」
確かに、自衛隊こそ誰かを救う存在の筆頭みたいな感じだもんね。
「そこからは厳しい訓練の毎日……でも、やりがいのある仕事だなって思ったんです、そしてある日……ダンジョンが現れた」
「それで……ダンジョンの中に初めて足を踏み入れたと」
「そうです、当時はまだ何もわかってなくて、手探りで探索していました、段々構造だったり特徴だったりが分かり始めた時に……一般人がダンジョンの中に入って配信をし始めたんですよ」
「あぁー……」
そういえば純ちゃんは元々それを抑える側だったよね。
「おかげでこっちの仕事は増えるばかり、最初は『なんでこんなことするんだろうって思ってました』
「でも今はそれを仕事にしちゃってるよね」
「ははは、そうですね」
そりゃ得体の知れないものの中に入って配信するって、普通に考えたら「何やってんだ」ってなるよね。
「でも、同時に思ったんです、『それって、ダンジョンの危険さを一番理解できるんじゃないか』って」
「……どういうこと?」
「リアルタイムで配信することで、そこがどういう場所なのか一目でわかるし、中にいる怪物の危険さだったり、どのような装備で戦えばいいのかってわかったり……」
「あー確かにね」
それは一理あるかも。
「それで……そんなある時の事です、いつものようにダンジョンで調査をしに潜ったんですけど……そこで、惨劇が起きたんです」
「惨劇?」
物騒な言葉が純ちゃんの口から放たれ、少し引いてしまった。
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