第13話 ホームラン
「えぇ!? 何してんの!?」
私は思わずそんな言葉が出てしまった。
なんの考えも無しに突撃開始してどうすんの!? 玉砕するつもり!?
……そう思ったが、彼女も考えなしに突っ込んだわけではなかった。
「よっ」
井上純は十分奴らに近づいたところでジャンプし、集団の真ん中へとダイブした。
そしてそのまま真ん中にいる防具を着たゴブリンに向かって蹴りをお見舞いし、そのままその反動を利用して、後ろにいる敵の顔面にに空中回転蹴りを食らわせた。
そのまま地面に着地したかと思えば、その場から勢いよく突撃し、目の前にいるゴブリンを両手で吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたゴブリンは、そのまま後ろにいた集団に追突し、将棋倒しの如く倒れた。
……そして、3割くらいのゴブリンが煙になり、魔石になっていった。
「……マジ?」
真ん中の画面で彼女を見ていた私は、その戦いぶりにドン引きした。
こんなのアリ? これってなんかのアクション映画?
そんな感想が出た。
『純様やっぱり美しくて強い! 大好き!! ¥50000』
『やべぇ……マジかよ……この人……人間? ¥1000』
『やっべぇ、変な笑い出た ¥5000』
『美羽ちゃんもヤバいけどこの人もおかしい ¥3000』
『美羽ちゃんドン引きやんけ! ¥500』
コメント欄は投げ銭で虹を描き、その戦いぶりを称賛した。
私も視聴者の立場だったら、その場のノリで投げ銭しちゃってるかも。
そのくらい凄かった。
そんな投げ銭の嵐の中、井上純は戦いを続けている。
真ん中のドローンカメラの映像では、彼女の目の前に棍棒を装備したゴブリンが彼女に向かってくるのが分かる。
ステゴロでどうやってこいつと戦うつもりなんだろうか? と、最初は思ったが、そんな疑問はすぐに解消された。
彼女はその長い脚で奴の持っていた棍棒を吹っ飛ばした。
突然のことに、ゴブリンは動揺しているように見えた。
宙を舞う棍棒を、彼女はジャンプして手に取って着地し、そのままバッティングの如く、奴を吹っ飛ばした。
そのまま奴は後ろへと吹っ飛んでいき、またも後ろの集団にぶつかって……魔石になった。
棍棒は力が強すぎたのか……真っ二つに折れた。
『ナイスバッティング ¥1000』
『ホームランやん ¥2000』
『映画観てるみたい ¥5000』
……井上純はそんな投げ銭の嵐に応える如く、笑顔でカメラに向かって手を振る。
眩しい笑顔が、画面越しに私にも見えてきた。
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