第12話 イケメンの活躍

 そこからは、まるで流れ作業のようだった。

 モンスターがいたら、とりあえず斬る。

 遠くの敵には手裏剣とクナイ。

 そして倒れたモンスターから大量の魔石を手に入れる。

 それの繰り返し……コメント欄を見てみると様々な意見が見られた。


『美羽ちゃん無双! かっこいい! ¥3000』

『美羽ちゃん大活躍じゃん、でもこれってコラボだよな?』

『そろそろイノジュンも活躍させてやれよ』

『純様地蔵じゃん、なんか飽きてきた』

『美羽ちゃんが怪物相手に無双するのもいいけどそろそろ井上純も見たいかな、でも観てて面白いから頑張れ ¥200』


 ……コメント欄の言い分はもっともだ、これは一応コラボってことになってるし、井上純にも活躍させよう。

 ちょうど目の前には、武器を装備したゴブリンの群れがいる。

 棍棒に短剣、そして防具……先ほどのゴブリンどもとは比べ物にならないくらい強そうだ。


「井上さん、そろそろ活躍、見せていただけませんか? 先輩として」


 彼女は言わばダンジョン探索のプロフェッショナルだ。

 視聴者はそろそろ私の無双に飽きてきたころだし、私も彼女の戦いぶりを生で見てみたいという気持ちがあった。


「先輩……そうだね! ボク、戦いじゃ先輩だもんね! わかった!」


 ……心なしか、井上純は嬉しそうに見えた。


「それじゃ、ボクの活躍、バッチリ見ててね! 美羽さん!」

「う、うん……」

「よっしゃ! 視聴者の皆さん! ボクの活躍、とくとご覧あれ!」


 井上純はその眩しい笑顔をドローンカメラに向かって披露し、気合を入れるように両手で拳を作り、気合を入れたことをアピールする。


『頑張って! 純様! ¥10000』

『純様かっこいい!』

『イノジュン見たことないけど期待してる』

『何気に切り抜き以外で初めて見るわ』

『どういう戦い方するんだろう? ステゴロで戦うんでしょ?』


 コメント欄は、彼女に向かって声援を送るように爆速で流れ始めた。


「えへへ、じゃあ、行きます!」


 井上純は私にウィンクをした後、そのまま怪物の集団に向かって全力疾走した。

 彼女を映すドローンカメラは、そんな彼女の追跡を開始する。

 真ん中の画面に、正面から見た井上純の映像が表示された。

 そして、そんな奇怪な行動をとる奴に注目しないはずもなく、ゴブリンの集団も井上純に向かって突撃を開始した。


「えぇ!? 何してんの!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る