間章Ⅰ 伝説を辿って
伝説は終わる
一日が経ち何も無く夜を明かす事ができた。
やはり、父が最後の最後に俺を救ってくれたんだ。俺を今も見ているんだ。そう思っているだけで消える事のない記憶、少しだけ悲しみが紛れる気がした。
「でも、これから俺はどうすればいいのかな…」
やはりその不安が大きい。
俺はこれからどう生きていけばいいんだ。
まだ強くもない、誰の目にも止まらない、誰も拾ってくれない足手まといのハンター。
ただぼーっとしているだけで時間が過ぎていく。
ご飯も食べれていない。
昼頃になると、俺くらいの見た目の男の子が何人かでおもちゃみたいな剣で英雄ごっこをしている。
「今日、俺がアーノルド役やる!」
「ずるいよメノばっかり、ずっと敵役ばっかでつまんないよ」
「じゃあ私は姫役やるねっ」
「うーーっ」
「うるさいぞモンスター!
この伝説の剣士アーノルド様が来たからには貴様の好きにはさせない!」
無邪気にごっこ遊びをしている子供達の物語には俺の父の名前が使われていた。
その話をしっかり聞くと、父の嘘みたいな話が次々と出てくる。
ノーガード、剣一本だけで5体1の状況で無傷で帰還したとか、嘘みたいだけどホントかもしれない話から
剣には不思議な力が宿っており、悪には効果絶大とか持っているとか、目が特殊で動きがスローに見えるや、
(でもそうだよなこんなに凄い人なんだ。
いくら衰えたからってそんな伝説みたいな人、死ぬ訳が無いか、)
俺は昨日の見た現実からまだ逃げたがっている。
すると、号外で記事を持った1人の男が大声で俺の逃げたかった現実を呼び止めるかのように喋る。
「特報です!
伝説の剣士アーノルド=ユースメルグが昨夜亡くなった事が判明しました。
死因は不明、人かも分からない状況。
しかし、アーノルドの証である剣が発見されました!!
盾は発見されません。
アーノルドは実在していました。神話ではありません実在する人物です。
たった今、伝説の幕が終わりました───
はいどうぞ、ありがとうございます。」
そう言って男の周りには記事を求め、行列が出来る。
それを淡々と配り始める。
俺はその言葉に反応したが、唯一記事を取りに行こうとしなかった。
それは信じがたい事、信じたくない事、
そして、真実だからだ。
「分かってるよ、その記事正しいって事も、お父さんが死んだって事も……だからその話をしないで……」
俺は父の話で耳が痛くなる。
俺は耳を塞いで下を向いて現実からまた逃げようとする。
そうしたら、女性とその娘が俺のところに来て何か言っている。うっすらただ何言ってるかは聞こえない。
聞きたくもない。
「ウィル君、私よパルナ、前に家に寄った…分かる?」
俺は耳を塞いだ手を離し下を向いたまま話を聞く。
仕方ないが聞きたくもない話がそこらから聞こえる。
「この記事、ウィル君は信じる?」
「なんですかそれ……」
「私は信じない、負ける訳が無いから、だって…」
その言葉が優しさだと今の俺には理解する余裕など無い。
俺は小さな声だが、その声は怒りに満ち溢れていた。
「さっきから何言ってるんですか、
その記事の通りです!
アーノルドはもういない、伝説は終わり、それ以上何があるんですかこの話、俺はこの目で見た!俺を守った父の姿を英雄の背中を!
不愉快だ」
声が大きくなるにつれ、口調も荒くなる。
(どうして俺にだけこんな試練を与えるんだ。
これを乗り越えたら何か凄え報酬でもあんのかよ
神様はどこまで俺の絶望を見たいんだよ、)
もう俺の決意は決めた。
この世界は終わっている。皆んな人の心が無い、アーノルドが死んで悲しい人がいるのにも関わらず、「伝説だ!伝説だ!」とか言ったり、「やっぱり無敵なんて嘘だったんだどうせ今までの相手が大した事なかったんでしょ」とか死んでからならなんとでも言える冒涜とも取れる心無い言葉を言う奴もいた。
「あり得ない、どうして分からない!」
「え…」
「申し訳ないですけど、話しかけないでください
もう、俺いなくなりますから」
「ちょっと!お父さんから伝言受けてるから聞いて欲しい…」
俺はパルナの言葉を完全にスルーし、歩き出す。
いく場所もない、迎え入れて行く場所もない。ならいっそこの人生終わらせてやる。
「この世界、期待してたんだけどな、」
俺は目の前にいる、ちょうどいい奴を見つけた。
そいつに俺は急に殴りかかろうとする。
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