最後の闘い
「お、お父さん大丈夫?」
父が俺を抱いている力が少しずつ弱くなっているのを感じる。死がすぐ目の前まで見えて来た。
俺にはどうする事も出来ない。
歳の男も母も流石に人の心があり、まだ生死がわからないターゲットにトドメを刺さなかった。
ピクッと父の手が動く、するとすぐに立ち上がる。
まるでその姿は本当に人間なのかと疑ってしまう程の再生力。
体はとうに限界を通り越している。
まだ何かその体でできる事があるのか、、
いや─────無かった。
「最後に一つ言わせてくれ……」
「命乞いか?
だが我々にお前を生かすと言う選択肢は無いぞ」
「そうよ、あんたがまだ動けると言うのに10傑から完全に姿を消して、でも私の夫だから監視対象として殺害対象には入らなかった。
でも今はそうは行かないもの、これで終わり。」
そう言って最後の戦いが始まる。
「ウィル、良いか、今が逃げるのに絶好の機会だ。
チャンスは一回だけ、俺はやれるって信じてるぞ!
何たって………
俺の息子だからな!!」
母の爆発魔法を父が1番嫌いな盾で防ぐ。
その盾は大きく、爆風で視界を奪い、俺が逃げるのには十分な隙があった。
(振り返ったら駄目だ、振り返ったらまた同じ事、、)
俺は心の中で想像をしていた。
父がやられている姿を、俺はそれを信じたく無かった。
でも怖い、やっぱり怖い。
後ろでは激しい爆発音、剣の音など一切聞こえない、間違い無く負けている。
「大丈夫だ!ウィル。
自分の子どもに何かあったら絶対に助けるのはお父さんとして当たり前の事だからな!
ウィルもそうだぞ、もしウィルに子どもが出来たら弱くても守る姿を見せてやるんだ。
子どもが安心するから」
ふと前に言った言葉を俺は思い出した。
父は最後まで「父親」をやり切ったんだ。
俺がとやかく言う事はない。父は当然の事をしたに過ぎず、その姿を見てまた意志を繋いでいく。
それが俺に託された事だと理解して、、、
バッと俺は後ろを振り返った。
その瞬間だった。
2人は俺が逃げているのに気が付いていた。
それを守るのに精一杯だった父が、俺が振り返った瞬間に爆発を直撃し、爆散した。
最後に俺の方を見た父の顔は優しくも男らしい、いつもの父親だった。
「ごめん、お父さんごめん!!
俺のせいで!俺のせいで!!!」
俺は大きな声を出した。
もう逃げてることなんてバレてる。
まだ生きてるかもしれない。
何も出来ないけど声は聞こえるかもしれない父に向かって俺は全力で逃げながら、想いを伝える。
「俺は、俺は!!
弱くて、何をしてもまるで駄目な息子だけど、
いっぱい努力して、いっぱい死にかけて出会いもあって、別れもあるけど、大人になって、いつかはお父さん見たいなハンターに絶対になる
そして、俺もお父さんみたいな大切な人が出来て、その人の為なら命を懸けてでも守り抜いてみせる!
絶対に忘れない!
だから俺の事をずっと見ていて欲しい!!!!」
まだたくさん言いたい事はあった。
家出をしてこんな目になってしまった事の謝罪とか、日頃の感謝とか、沢山あったのに、
俺が強くなっていく姿を誰よりも近くで見てくれて、一緒に喜びを分かち合いたかったのに、俺のせいで、俺の……
ドアを開け俺はひたすら逃げた。
今あった事を全て噛み締めながら。
外に出たら追ってはこなくなった。
流石に人目がつく場所での戦闘は防ぎたかったのだろう。
ひと段落がついて、俺は全ての状況が真実であり、その真実が受け入れられずに絶望する。
街中にも関わらず、ぶつぶつと独り言を発している。
「俺のせい…で、お父さんが
どうして、俺がいると不幸になるんだ。
いっそ俺が死んだ方が良かったんじゃないか」
ネガティブな事を1人で歩きながら発しているからか、周りがジロジロと見てくる視線を感じる。
が、そんなのはどうでも良い。
なんなら俺の事がウザかったら、いっその事殺してくれればいいのにとまでに落ち込んでいた。
「どうせ今死んでも、生まれ変わるし、生まれ変わっても何も得られない、何も変わらない………何も」
生きるために必死に逃げた俺はどこに行ってしまったのだろうか。
遂に俺は立ち止まってしまった。
街の真ん中で上を向いて、手を掲げて、届くはずの無い父と同じ場所を望んだ。
大広場の噴水の端に座りただ意味のない時間を過ごす。
夕暮れ、帰る場所も無い。
勢いで出て行ったせいで帰る方向も分からない。
夜になったらまた母達が俺を襲ってくるかもしれない。
いろんな不安にかられながらも、変に動いて人気の無い場所よりかは人のいる場所がいいと判断して、この場に待機して今日は一日を終える。
第一章 ー完ー 第二章をお待ち下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます