仮説


「どうして俺には何も無いんだ!」


 俺とは正反対の自信に満ち溢れた表情に強そうなオーラを纏い、周りにはハーレム軍団を率いている男がいた。

 普通異世界転生したらお前みたいな展開になるとが常套句だろうが!どうしてこんなことに……

 まあこいつなら俺を殺してくれるだろうと、難癖つけて襲いかかる。


「くそおおっ!」


 しかし俺の攻撃が届く前にハーレム女子軍団に俺は取り押さえられる。

 

「貴様!フェル様に何をしようとした!」

「こいつ、殺しますか?」

「そうですね、邪魔者は排除するべきだわ」


 俺は女子にも力で勝てない。

 こんなに惨めな死に方、それでも良い、もうお前らとなんか2度と会わないからな。



「おい、ちょっとやめろ手を離してやれ」

「す…すいませんフェル様」

「お前、何者だ?」


 なぜか殺されていない、この男は俺に興味を持っているのか?

 別に殺してくれて構わないのだが、死ぬのは一瞬だからな。

 無敵の男になった俺は絶対勝てないのに、強気に出る。


「初対面でその喋り方、まるでお前が世界の中心みたいな奴、1番嫌いだ」

「じゃあ……貴方は誰でございますでしょうか?」

「おいおい、ギャグか?面白くねーよ

 面倒だからさ、早く俺を殺してくれよ、もうこの世界にいる意味を失ったからさ、」



 そう言うと、男が髪の毛をかきあげて、俺を見る。

 変な目をしている。

 何か特殊な能力でもあるのか?


「お前、面白いなちょっと来いよ」

「なんだよ、殺さないのかよ」


 俺は何故か分からないが男に気に入られた。

 生き残ってしまった。

 

「ちょっと!まだ私も話が…」

「今簡潔に俺に教えろ、お前が俺に逆らったら速攻殺す」


 男がパルナに一瞬で近づき首を取る。

 斬った訳ではないが、主導権は握っている。

 逆らったら殺されてしまうかのような雰囲気が漂っている。


 何か話を終えてニコニコしながら、俺の方に向かってくる。


「話は終わった、取り敢えず数日こいつは借りるわ

 大丈夫、悪いようにはしないし、絶対に返す事も約束する」

「何?

 俺はお前の所有物じゃ…」

「黙れ、お前強くなりたいんだろ?

 生きる為の力が欲しい、そうだろ」

 

 何故こいつが父にしか言っていない言葉が分かるのか、

 もしかしてこいつには人の心でも読める能力も与えられているとでも、

 少しは俺にもそんな能力与えてくれよと思った。


「よろしくお願い……します。」


 


 こいつの家は想像した豪邸では無く、前の家と同じく離れにある別荘の様。

 しかし、かなり大きい。

 ここにはこいつとハーレムを築いている女性数人しか暮らしていないそうで、俺の部屋の勿論あった。


「取り敢えず、話を聞かせて欲しい」

「まずは、そっちからだろ」


 俺は優しくされても、そんな優しさは必要ないと言わんばかりに高圧的な態度で会話の主導権は渡さない。


「……悪いな皆んなはこの部屋から出てもらえるか

 2人で話がしたい」

「おいおい、殺すつもりか?」

「なあ、お前いつまでそんな態度でいるんだ?

 俺はお前に何もしないとさっきの女性に約束してる」


 男は流石に俺の態度に呆れてしまった。

 まあ俺が転生者であり、死んでもどこか違う世界に転生できると言うのは俺しか知らないだからこそ、父との事さえ割り切れば次の世界でまた頑張る事だって出来る。

 

(記憶は残る訳だし、な)


 女性がいなくなり遂に1対1の状況になる。

 これなら何言っても殺されない。

 さっきからハーレム達の視線が怖くて仕方なかったからな。


「俺から、話そう

 フェールイス=ユグドラシル 15歳

 呼び方は…」

「よろしくなイス」

「フェールイスだ!」

「悪い、よろしくなルイス」


 俺はここまで来ても上から目線、ガキだ。

 対して15歳にしては妙な落ち着きのある男だ。

 顔も整っているしこんな家を持っているなんてそりゃモテるのも不思議じゃないな。


「ウィルフレッド=ユースメルグ あと数日で10歳になる

 よろしくな。」

「うん、よろしくウィルフレッド」

「それじゃ長いだろ、ウィルでいいよ」

「よろしく、レッド」


 せっかくいい感じで進んでたのにこいつもちょけて来やがった。

 おかげか俺の緊張も少しずつ和らいだ。

 死んでもいいって考えはお預けだ。


「親にはウィルって言われてたから、ウィル以外では反応できない」

「ユースメルグ?親は有名なとこだろ?」

「まあ、それなりに?」


 こいつ、すぐには気づかないのか?

 生地が配られていたと言うのに、何かすらも分からないのか?


「ユースメルグ、どこかで……ユイナか!」

「どうしてそっちを、」

「ああ…何でもない

 もちろんアーノルドの方も知ってる……話さない方が良いかなって思ったからさ」


 案外こいつは良い奴なのかもしれない。

 やはり父の訃報を知っていて、ユースメルグと聞いてすぐに反応するのでは無く、俺の返答を見て聞いて良いかを判断した。

 相当切れる奴だ。


「まあ、別に良いよ変わらない事だし

 俺はさ、ずっと期待されて生きて来たんだ……」


 そこから俺はルイスを信頼したかの様にほぼ全ての事を話す。


 父は俺を庇って死んだ事から俺の特殊体質まで、言っても問題無いと判断したから。


「まあアーノルドの話はさ、パルナも言ったと思うんだけど、死んで無いと思うんだわ」

「俺はこの目で見たって言ってるのに?」

「勿論」


 この自信満々に答える根拠はどこにあるのか、少しの間が空いて、再び話し始める。


「まあ、爆散したって言ったけど実際に見つかったのは剣と灰になった衣服の様な物だけ、骨が一切無いのは違和感と考えるのは妥当だろ?

 まあ、捜索が甘いと言えば何とも言えんが、それにこれを見てみろ、あり得ないのが分かるか?」


 そう言われて俺は写真を見る。

 てかこの世界に映像ってあるんだな。


 何も変哲のない写真。俺が見ただけではおかしな所は見当たらない。

 この写真はもしかして、

 俺がこの目で見た父は戦闘中に多量の血が溢れていたのに、複数の写真には剣以外には一切の血痕が映っていない。


「フェイクニュースって事?」

「その可能性が高い、この話で正しい事は伝説アーノルドは実在すると言う事。その証拠に息子であるウィルがここにいる

 そして、アーノルドは逃亡した可能性が高いと言う事だ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る