第33話 高等部編エピローグ 相手を許し自ら歩み寄ることでいつかはいじめも解決できる
そして、1年が過ぎた。ポッシュは駿台予備校の模擬試験では第1志望の東京大学文Ⅲの合格予想率は60%、共通一次は810点だったので、一応は合格圏内だった。しかし遊んでいた「バチ」が当たったのだろう、屋上部に入った当然の報いとして、「浪人」となった。やりたい放題の生活を送りながら「勉強なんてあまりしなくてもできる」と「天狗」になっていたので、「神様はその鼻をへし折る必要があった」のだろう。「偉そうで、とんでもない性格」にならないように、「天」が配慮してくださったのだ。屋上部で現役合格できたのは、東工大に進んだエレファントだけだった。
春休みに行われた駿台予備校の入試では、当時早慶より入学が難しいといわれていた最難関の「文科Ⅰクラス」に入学できた。そして、予備校近くの「ジャズ喫茶」で、屋上部の連中と再び顔を合わせることになる。浪人時代に一緒に行動をすることで、徐々に屋上部員との関係を修復していった。受験勉強が生業である浪人時代に遊んでくれる仲間は少なかったので、彼等にとっても「麻雀」から「スロット」、「ビリヤード」、「ジャズ喫茶」など何でもつきあえるポッシュは、「貴重な遊び仲間」だった。また、屋上部とポッシュとの諍いの元凶だったアルルカンが大学に進学せず、初年度から「テレビ・ディレクター」として多忙となり、メンバーとは疎遠になっていたのも大きかった。
ポッシュとベビーフェイスが麻布時代に仲直りをすることは、残念ながらなかった。しかし、ポッシュは諦めなかった。そして遂に大学時代には、ベビーフェイスと親友となった。大学時代を通じて4年間付き合った彼女とは「週に2、3回」会うほど「ラブラブ」だったが、彼とは飲み会やテニスなどでそれ以上の「2日に1度」も会っていたというのだ!
「いじめ」は確かにエスカレートするが、もともとは他愛無いことがきっかけのこともある。「容姿」など改善できないことを責めるなど相手に本当に「悪気がある」のなら、「修復は不可能」だろう。だけど、悪気なんてなくて、ただの「勢いや流れ」でそうなったのなら、「やり直す機会は必ずある」。そして、その手段の1つが、「相手を許すこと」なのかもしれない。「右頬を打たれたら、左頬を差し出す」のだ。どの宗教でも説いているし、多くの名作と言われる本や映画にも描かれている。被害者の方から「歩み寄り」、「諦めなければ」、いつかは「相手の心に辿り着ける」可能性もあるだろう。
「歩み寄っていく」だけでなく、「相手にいじめられていた原因が何か」を考え、「努力し、それを改善して、認められるようになっていく」ことも必要だろう。「いじめられた」のを「全て相手のせいにせず、自分にも非がある」と考える「自責の精神」からの発想だ。
「Jr、世の中は交通事故と同じで、100%相手が悪いということは、実はあまりないんだ。高校時代にお父さんが「いじめられた」のは、叔父さんから嫌われていたように、「お父さんが情けなかった」こともあるんだ。「そういう奴が生理的に受け付けられない」という人は、「世の中に相当数存在」するんだ。だから「いじめられた」のは、「お父さんのせい」でもあるんだよ」
そして、「決して諦めない」ことだ。最後には曽祖父が語ったように、「時が解決してくれる」のだから。
この「いじめの解決方法」は、ポッシュ独自のものだ。キリスト教などの間接的な影響はあったのだろうが、屋上部でいろいろな経験を積む中で自分の頭で考え、行き着いたものだ。
父ポッシュの話は「実話」なので、僕もこのような「理想に思える説」を信じることができた。なぜって、この話にはさらに続きがある。ポッシュは大学卒業までには、ベビーフェイスの次に仲良い友達ができた。3人でよく飲みに行っていたアンクルと、匹敵するくらいに。それは、なんと、アルルカンだった!
2人とも「食べる事が大好き」だったのと、ポッシュの「音楽や美術、写真撮影などへの造詣の深さ」を認めたからだ。さらに、いつの間にかポッシュが、「己を知り、様々なことを学び、自分の頭で考え創造する」という、「高校時代のアルルカンがやっていたこと」を「大学3、4年の頃にはできるようになっていた」のが大きかった。
「ポッシュ、いつの間にか成長して、屋上部の中でも唯一俺と張り合えるレベルになってんじゃん」
と言うと、意気投合したのだ!こうして彼は、ポッシュが海外に留学していて不在の際にも「渋谷の実家」を訪ねては、おじいちゃんや祖母とお酒を飲むぐらい、その家族にも懐いていった。
長々と語ってきたが、「屋上部」のおかげで中等部では「家庭内での自由」を獲得したポッシュは、高等部と浪人時代を通じて、「いじめを克服」した。その方法は、英語にすると簡単だ。”It was not your fault, I was wrong, either. Never give up! It is not the end of the world. Time is a healer.”
しかし「より重要」なのは、「いじめを克服すること」よりも、「いじめ自体を減らすこと」だ。そのためには、世の中の人が「神様などの絶対的なものへの畏怖心」を取り戻し、「悪行をしたら地獄へ落ちる」とか、「因果応報で自分に悪行が戻ってくる」と理解しなければならないと、ポッシュは力説する。
「みんな、そろそろ分かろうよ!いじめは10倍返し、幼児虐待なんて100倍返しになっちゃうよ!」と。
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