第24話 プリンスの引退宣言と新体制の幕開け

 そして、まだ「残暑」の残る9月のある日。「屋上部」にもポッシュにとっても、「衝撃的な事件」が起きた。プリンスが、「俺、勉強するから!」と宣言し、「屋上部を退部」したのだ!お父様と同じ「弁護士を目指す」ためだった。

 「ニコチン」や「アルコール」を絶ったわけではないが、「渋谷に行く」のをやめて、「図書館で勉強に専念する」というのである。その「証拠」というわけではないが、「トレードマーク」だった「ロンブ」を脱ぎ捨て、「スニーカー」に履き替えた。「キラキラシャツ」も、「チェック柄」の「渋いシャツ」に変わっていた。さらにジーンズも、「ベルボトム」から当時流行し出していた「スリム」に変えたのだった!

 小学生の時に既に160センチの身長を誇っていたプリンスだったが、高1の秋になっても「タバコ」の影響なのか殆ど背が伸びず、165センチを超えたぐらい。「ロンブ」を脱ぐと、突然小さくなった。「スリム」は脚が長くみえる「ベルボトム」とは対照的だったこともあり、アルルカンに蔑まれた。

「あれ~、プリンスって実は脚短いんだ、ダッサ!」

 しかしポッシュは、「わざと自分をダサく見せた」という考えだった。



「『ダサい』とアルルカン達にも『遊び』に誘われないし、女の子にも『モテなくなる』からね。すると『異性への誘惑』もなくなる訳だよ。お母様から『大学に入ってお洒落になれば、女なんてまたいくらでも寄ってくるわよ』とか諭されたんじゃないのかなぁ」

 「ヤンキーの世界」では「不良」を「影」から締めていた「裏番」が「中学卒業」と共に「足を洗う」、と聞いたことがある。プリンスも半年程遅くはなったが、「大人になる」ために、「しっかりとした仕事」につく事を「目標」に、「遊び」を「中断」したのだろう。ポッシュはその「決断」を、「カッコイイ」と思った。但し、中1から「屋上部」に3年半も在籍していたプリンスとは違ってまだ2年も経っていなかったので、一緒に「退部」はしなかった。

 こうして、レフトウイングという、同じ「スリムのジーンズスタイル」の「屋上部員」と急速に仲が良くなったプリンスは、「ビリヤード」、「ボウリング」、「ジャズやロック喫茶」などに行くと言う「屋上部の部活」にほとんど参加しなくなった。ポッシュは、「1つの時代が終わったのだなぁ」と、1人感慨にふけっていた。


 


 「学外」にはまだその「存在」を知られていなかったベビーフェイスだが、「イケメン」なだけでなく、当時としては「斬新なファッション」を身に纏い、アフロのおかげでジャズなどの「シブい知識」も身につけ、「大人な雰囲気」を醸し出し始めていた。こうなると、女の子達が放っておくはずがない。「突き抜けるような青空」が広がる10月末、麻布からほど近くにある「東洋英和の文化祭」にアフロとベビーフェイスが現れると、「後者」は「嬌声」で迎えられた。そして、「英和でも有名だった美少女」と付き合うことになる。

 こうした経緯でプリンスに代わり、「屋上部のリーダー」はアルルカンが、「アイドル的存在」はベビーフェイスが引き継いだ。女の子に興味なかったようなアンクルも、成行きなのか、「ベビーフェイスの彼女の友達」と付き合い始めた。プリンスと並んで上級生にも認められていたアンクルの「後盾」も得て、アルルカン、アフロとベビーフェイスが「屋上部のトレンド」を作るようになった。まさに「新体制の幕開け」だった。プリンスはリーダーといっても何かを「強制」し、「命令」することはなかった。「共に楽しむ仲間」が欲しかっただけだ。しかしアルルカンは、「屋上部員」に「指図」をするようになる。

 


 ついでの話だが、実はポッシュもこの時、「英和の文化祭」に行っていた。将来「テレビアナウンサー」となる女の子ら2人にスリムと一緒に案内され、「キャ~キャ~」言われていい気になっていた。だけど、マリリンの親友だったスリムの彼女。その妹が英和生だったので、「文化祭」にでかけたのがばれてしまった。「中央図書館のある公園」に呼び出されると、泣きじゃくるマリリンに思いっきり「ビンタ」された。あまりに突然だったのと、そのスピードの速さに全くよけることが出来ず、「漫画のワンシーン」のように見事に引っ叩かれてしまった!

 ポッシュはその後大人になってからも、「美人の彼女」達を、その「容赦ない言葉」で泣かし続けてきた。しかし英語でいうところの「ビッチスラップ」を喰ったのは、後にも先にも、このときだけだった。

「可愛いと思った女子は何人もいたけど、どの子にも電話番号を聞いたわけではないのに、なんでなんだろう?」

 とボソボソ言っていたが....こんな感じで、「高1の秋」は過ぎていった。

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