第19話 都立中央図書館とスーパーサイヤ人のような勉強脳になる方法

  このようにポッシュの「中3生活」は、中2の頃とは全く「別物」になっていた。「アルコール」と「ニコチン」が原因なのか、「勉強も家だとやる気にならない」ので、「屋上部の生徒」は学校のそばにある「都立中央図書館で行う」のが「習慣」となっていた。そこは実は、派手な中高生の「溜まり場」だった。渋谷の「ロック喫茶」に通っているような、「雙葉」や「女学館」、「英和」、「桐朋」などの女子校生も集まっていた。男子校生徒も麻布生以外には、僕の母校である「塾高」や「駒東」などがいたそうだ。

 「中央図書館」は「エレベーターホール」から「入り口」を入ると「本棚」があり、その左右と前には「机」が並んでおり、そこで勉強をしつつ「ナンパ」もしていた。3階の「本棚」に並んだ「本の陰」から様子を伺い、可愛い子がいると「エレベーター前」に連れ出す。「すいません、ちょっとお喋りしませんか?」みたいな感じで、「彼女達の席」に行って声をかける。

 「赤面対人恐怖症」を克服した高2の頃になると、ポッシュにもできた!といっても、たった1回だけだったが。それなのに「Da Ya Think I'm Sexy?」が大ヒットとなり当時大人気だった「ロッド・スチュワート」そっくりの「駒東の上級生」も同じ女の子を気に入り、「苦戦」したそうだ。僕の大好きな人気ドラマ『ゴシップガール』を彷彿させる「エピソード」だ。灰皿のある「エレベーターホール」や5階の「食堂」が、女の子達と、または仲間内で「お喋りをする場所」だった。


 

 

 「2時35分」に授業が終わり、3時ごろから「中央図書館の3階」で机を並べて「勉強」を始める。ようやく「エンジン」がかかってきたと思うと、スリムから「そろそろ、一服しない?」との「お誘い」がかかる。「エレベーター前」で「タバコ」を吸いながらの「休憩後」に、再び「勉強」を始める。しばらくすると、やっとのことでまた「脳味噌」が「勉強脳」に変化してくる。

 すると今度はアンクルが、「おいポッシュ、腹減ったから、上で何か食おうぜ!」と言ってくる。「中央図書館の5階の食堂」からは、「図書館のある公園」が見渡せた。「なかなかいい眺め」なのだが、そんなものに「感動」していた部員などは、誰もいなかった。プリンスは「ジューシーなハンバーグ定食」、ポッシュは「カリカリのチキンカツ定食」が好きだった。「そんな感じ」なので、「勉強時間」は「滞在時間の実質半分」にも満たない。「スーパーサイヤ人」並のな「桁違いの記憶力」と「論理思考力」を備えた「勉強脳」になれた時間は、そのうちの「10分の1」ぐらいだった。


 

 ところでポッシュは、勉強における「スーパーサイヤ人」への変身後にあたる「勉強脳」になる方法を、数年後に「習得」することとなる。まず、「バッハ」の『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』という名曲の中でも「至宝」と言われる「シャコンヌ」で知られる「パルティータ第2番」という曲をレコードで流す。ロックに慣れきっていて、「ニコチン」と「アルコール」で濁りきったポッシュの脳は、最初は「拒否感」を示す、「こんなかったるい曲聞いてられっか!」と。当時、その脳は「黒い、ダークサイド」に「支配」されていたのだ。

 しかし、30分、1時間と「我慢」して聞いているうちにポッシュの中に存在する「白く、透明な、天」に近いものが「覚醒」され、「至福の感情」が沸き起こってくる。こうして「天?」に近い存在と「交信」する中で「脳は」「活性化」され、「戦闘におけるスーパーサイヤ人」のように、「勉強においては無敵の勉強脳」になれたのだ。「この状態ではどんな難しい問題も解ける」という「自信」が、「ふつふつ」と湧いてきた。しかし、「スーパーサイヤ人」へ「変身」できる時間が限られているように、「そうなれる時」は限定されていた。


 

 話を元に戻すと、5時ごろには誰かが「おい、そろそろ渋谷に行こうぜ!」と言うと、揃って「ロック喫茶」や「ゲーセン」、「ビリヤード場」、「ボウリング場」などに向かった。帰宅するのは、いつも8時過ぎのことが多かった。祖母には「友達と図書館で勉強している」と言ってあったので、遅く帰るのも問題はなかった。こうしてポッシュは、「ロンブファッションを許され、パーマもかけただけではなく、実はタバコを吸い、渋谷で遊びまくる自由」を手にしていったのだった。祖母がその事実を知ったならば、「卒倒」していただろう。その後は、「ご飯を食べて、お風呂に入って、レコード聴きながら再び勉強を始めることもあるかな?」という「感じ」だった。

 そういうわけで、「1日の勉強時間はせいぜい1時間」。「帰宅部」の頃は、「3時間ぐらいは勉強」をしていたので、「成績が落ちていったのも当然」だったのだ!試験2週間前になると、流石に「屋上部」といえども「勉強」をする。渋谷には行かずに、「中央図書館」に3時から8時ぐらいまで、たまには「閉館」の9時までの事もあったが、なんとかこもっていた。3時間ぐらいは勉強をできた。ポッシュは「8時間寝ないと頭が働かない」ので、試「験2週間前にも6時間は寝る」ようにしていた。そのため、帰宅後に家で1時間やったとしても、「合計4時間」だった。

 しかし、「帰宅部」の生徒は「普段から4時間、試験2週間前には8時間」は勉強をしていた。中には、試験前日に徹夜をしている「帰宅部」の同級生も多かったが、ポッシュには到底、「無理」だった。「帰宅部」の勉強量は、4時間の3ヶ月で360時間、8時間の2週間で120時間、480時間となる。「屋上部」はというと、図書館に行くのは普段は2日に1日とすると1時間の1.5ヶ月で45時間、4時間の2週間で60時間、105時間だ。「帰宅部」の「4分の1から5分の1」となるが、「感覚的にはもっと少なかった」。


 

 それでも何とか年末の2学期の「期末試験」や、年が明けた3学期の「中間試験」と「期末試験」では、「クラスの上位3分の1ぐらい」には入っていた。特に得意の「歴史」、「数学」、「英語」では、90点以上は取れていた。そのおかげで、祖母も中1に戻ったぐらいにしか考えず、ポッシュが「遊んでばかりいても、ばれなかった」。しかし、ポッシュは気がついていなかった。「一夜漬け」の勉強で覚えた内容などはすぐに忘れてしまい、「ボディー・ブロー」のように、将来の「大学受験時」には効いてくる事を!

 もちろん「ツキが1番重要」なのかもしれないが、基本は「努力をしている人が報われる」ように、「世の中はできている」のだ。後々考えると、ポッシュの「実際の成績」は、この頃には「クラスの半分以下」になっていたのだろう。「屋上部」に入った事の、「当然の報い」だった。

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