第11話 クイーンは本国より日本で先に人気に!エルトン・ジョンのライブと前世への目覚め

 周囲の「帰宅部」の生徒の間では「3人組のアイドル」が大人気だったが、前述のようにポッシュは、中2の頃から既にロックを聴いていた。「Zep」は「レッチリ」と並んで僕も大好きなバンドで、「僕達の世代にも人気なのは凄いな~と」改めて思った。僕の親友は2回も観に行ったと言っていたが、日本の「ミレニアル世代」の間でも人気となった映画『ボへミアン・ラプソディ』。その主人公である「クイーン」が登場したのもこの頃だったそうだ。

「当時は『ミュージック・ライフ』という雑誌が流行っていて、今でいうと『週刊ジャンプ』を買う感じで『ロック・ファン』はみんな次号を心待ちにしていたんだ。そこから『海外で流行しているミュージシャン』を知るようになったつもりだったんだけれど、実はこれが違っていたみたいなんだ」

「編集長らが女性だったこともあって、今で言う『ヴィジュアル系』のバンドが大きく取り上げられていた。そして、まず日本で流行ってから本国で人気が出るという『逆輸入現象』も起きていたようなんだ。あの時代は『海外の文化』に皆が憧れていたから、それだけ市場も大きかったってことだよ」


 「クイーン」も、実はその「ルックス」から、まずは「日本の女子高生の間で人気になったバンド」の一つらしい。彼等は本当の実力もあったから本国のイギリスでもその後人気になったけれど、アメリカへの進出は遅かったようだ。僕の中では「逆輸入」というと、「キラーズ」や「ホワイト・ストライプス」などの「UKロックぽい音を出すアメリカのバンドがイギリスでまずは流行って、その後本国でも人気になったというイメージ」だ。昔の日本が「世界の流行の最先端」だったなんて、僕には想像もできないけれども、どうも本当のようだ。

「日本発の人気バンドだと他には『エンジェル』と『ジャパン』があったんだ。『エンジェル』はその名前のとおり、天使のような『サテン』のひらひら衣装を纏っていたんだ。『ビートルズ』に対抗して『モンキーズ』が作られたように、『米国版クイーン』という感じだった。デビュー・アルバムは結構好きだった記憶があるよ。『ジャパン』はバンド名が『日本』なのだから、日本の女の子のために結成されたバンドということだよね?」

「『ジャパン』も本国の英国では全く注目されなかたんだけれど、フロントマンの『デビッド・シルヴィアン』は実は優秀なミュージシャンで、その後本国でも人気となって、『クリムゾン』のフロントマンである天才『ロバート・フィリップ」』とのコラボ・アルバムを出すぐらい評価されるようになったんだ、確か家に『ヴィニール』あったから聞いてみれば?」

 「根暗」だったポッシュは、「ジャパン」の物憂げな、退廃的なサウンドを当時から好んでいたようだ。 それにしても、「クイーン」はもちろん、「ジャパン」もその後本国でも流行したのだから、『ミュージック・ライフ』の女性編集者の方々はしっかりした耳を持っていたということだろう。見た目だけで売り出していたわけではなかった点が、「凄いな〜」と思ってしまった。



 そんなポッシュの初ライブは「エルトン・ジョン」で、名曲「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」などの大ヒットで、日本でも人気が出ていたらしい。「僕達の世代」では知っている友人もいないのだが、

「本国では未だに凄い人気らしくてね、伝記映画『ロケットマン』も公開されたって向こうの島国の友達が言っていたよ。去年のライブで世界で1番人気だったのも彼らしいし、『この島国』がいかに『ガラパゴス化』してるかってことだよね?」

 と、教えてくれた。「ロケット・マン」とは彼の「代表曲のタイトル」だ。「トランプ元大統領」が「某国の主導者」をそう呼んでいたのは聞いた事があったが、まさかここからネーミングされていたとは知る由もなかった。単純に「ミサイルを飛ばすのが好きだからついたニックネーム」なのだと思っていたから。


 初コンサートということもあったが、「ハードロック」の雄で大好きだった「ディープ・パープル」の名作アルバム『ライブ・イン・ジャパン』も録音され、当時の海外アーティストの憧れでもあった「武道館」に行けることも嬉しかったようだ。本来は「スキンヘッドの学生による剣道や柔道などの武道の大会が行われる」はずの「武道館」に、その頃は長髪の「ヒッピー」のような若者が集まり「ロックの殿堂」になっていたほうが、僕には不思議だった。

 ポッシュはカメレオン、スリムと一緒だった。年も明け、1年で最も寒い2月初頭に、「ブルブル」震えながら、「アリーナ席」に辿り着いた。周りは大人ばかりで、恐らく最年少だった。「ライブ」前から「エルトーン!」という「催促コール」が飛び交い騒然となっているのは、今と変わらない。「ライブ」自体は「ダニエル」などの「スローチューン」から、「土曜の夜は僕の生きがい」のような「ロック」まで多彩な内容で、あっという間の2時間だった。帰り道では、

「いやあポッシュ、会場が揺れていたよね。『パフォーマンス』も凄かったし、大音量で『ナマの音』が聴けて、やっぱり『ライブ』は違うよね」

「ほんとだねカメレオン、これからは『レコード集め』よりも『ライブ』にお小遣いを使うよ」

 と、みな興奮していた。


 

その直後に、なんとも「不思議な出来事」が起きた。恐らく「姉妹」の白人の女の子と「九段下」の地下鉄の入口で出会ったのだが、2人はポッシュの顔を見るなり頷き合うと、若いほうの子がいきなり手を伸ばすと、その手を握ってきた。そしてその眼をしばらく、「何も思い出さないの?」と言いたげに、じ〜と見つめていた。啞然としていたポッシュは、実はその時「タータンのキルト」を着ている自分らしき人物の幻影を見たのだ......


 何の反応も示さないので、2人は何度も振り返りながらも地下鉄の入り口に消えていき、ポッシュはただその場に立ち尽くしていた。もちろん白人の美少女に話しかけるなど、当時はまだ「赤面対人恐怖症」が治りかけのの彼には無理だったのだろうが。

 カメレオンは真面目に、眉間にシワを寄せ、口を尖らせながら、

「今の子達はポッシュのことを知っているみたいだったけど、知り合いなの?」

 スリムはいつもの調子で、

「すげ~可愛くて、白くて、妖精みたいだったじゃん、どこで知り合ったんだよ~」

 と「ニヤニヤ」しながら尋ねてきた。

「外人どころか日本人でも、同年代の女の子なんて知らないよ!」

 と、ポッシュは、なぜか叫ぶように答えていた。



 その後大人になってから現地を訪れ、「バグパイプの音色」を聴いた瞬間に、

「もしかしてあの女の子と『前世』で一緒だった?向こうはあの時に分かっていたのかな?」

 と、この「事件」を突然思い出した。はっきり言って、僕には「全くついていけない話題」だが。

 このように「前世」を過ごした?国を一部としているので、「UKロッ」クが「バイデン大統領」の国のものよりも、ポッシュの「好み」だったのかもしれない。

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