第38話 覚悟

「ここがパパとハルママとナツママの木がなる場所なの?」

「そうだよ」

「良い場所ね・・・」

「あぁ・・・」


ママは900巡を越えてたあたりから体が老い始めた。領域を広げる作業は僕が中心となって行っている。ナツも僕とママの近くを苗床にしたいと言い出し領域を広げるのに協力をし始めている。今日はママの世話をナツにお願いして僕一人で作業をしていたのだけど、突然巨大樹の家を出た筈のフユがこの地を訪ねて来て驚いた。


「私もここを苗床にしちゃだめ?」

「構わないけどまだ考える時間はあるよ?」

「そうだけどさ・・・」


フユは成人したあとも150巡程一緒に暮らしていたけれど、ある日旅に出ると行って出ていき各地を放浪し始めた。フユが巨大樹の家に帰って来る度には話を聞いていたけれど、僕やママやナツが訪ねたけれどすぐに追い出されてしまった密林の黒の人とも最近は交流し始めたと言っていた。


「パパ・・・」

「なんだい?」

「私・・・各地を旅をしたけれど、ステキな人がまだ見つかってないの」

「そうなのかい?」

「うん・・・」


婚姻関係の報告に来たのかと思ったら違ったのか・・・。


「学神、仁神、徳神、浄神、薬神の友、医神の友・・・パパってそんなすごい人だったんだね・・・」

「浄神?それは初耳だ・・・」

「浄神は最近つけられた称号だね・・・汚染された川と大気を綺麗にしたんでしょ?」

「隠れてしたつもりだったんだけどなぁ・・・」

「こんな事が出来て名乗りをあげない人は学神、仁神、徳神だけだってさ」

「そんな風に思われてたんだ・・・でも僕はそんな話を君にした事ないよね?」

「自分で調べた・・・」

「調べて分かるのかい・・・」

「ババが苗床の候補地にしているこの場所の事を調べたらね・・・山岳の赤の長の自叙伝に森林の白の偉人に領地を与えたって書いてあったの・・・他にもあったよ?」

「なるほど・・・それは確かに僕だってバレるね・・・」

「うん・・・」


鈍い僕でもフユが言いたい事はなんとなく分かってしまった。だからちゃんと聞いて答えを出さなければならないと思った。


「パパ・・・」

「なんだい?」

「私・・・パパに初めての人になって欲しい・・・」

「・・・僕はその子が大きくなる頃には既に苗床になっているかもしれないよ?」

「分かってる・・・」

「苗床を完成させないといけないから育児をちゃんと手伝えないかもしれないよ?」

「分かってる・・・」

「そして君は・・・「だってパパが好きなんだもんっ!」」


フユは僕の言葉を遮るように叫んだ。


「・・・」

「ダメ?・・・パパ・・・」

「血が濃すぎて丈夫な子が産まれないかもしれないよ?」

「うん・・・」

「ナツママには相談するからね?」

「もうナツママには相談してある・・・」

「いつの間に・・・」

「私が家を出る前にね・・・」

「そんなに前からなのかい・・・」

「ナツママは外に出て色々見てもパパが好きなら良いよって・・・だから家を出たのよ?」

「そうだったのか・・・知らなかったよ」

「ハルママにパパしか居ないって分かるまで話さないでってお願いされたの」

「ママもなんだ・・・」

「うん・・・」

「そうか・・・」


僕はどうやら覚悟を決めなければならないようだ。

僕は既に815巡になっている。今から作った子供が成人した頃は1000巡目前になってしまっているだろう。


「帰ろうか?」

「うんっ!」

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