第35話 剪定
「アプの剪定はこんな感じだね」
「難しい~」
「ゆっくり覚えればいいよフユ」
「うん!」
フユは43巡の寒くなりだした季節にエレメントの使役を覚えたので寒くなった今の時期に間伐や剪定を覚えて貰おうと外に連れ出して教えている。
「あっ・・・飛び蜥蜴が来たよ?」
「大丈夫だよ・・・」
「あっ・・・逃げていった」
「少し嫌がらせしてあげれば逃げてくれるからね」
飛び蜥蜴は雷のエレメントを使役して少しだけ痺れて貰うと嫌がって逃げてくれる。他の方法でも撃退は出来るけれど、一番優しく逃げて貰う方法はこれが一番だった。光のエレメントで目くらましたり火のエレメントで脅かす事で逃げてくれる個体も居るけれど確実性がない。時間稼ぎなら時間のエレメントは最適だけどずっと維持し続けなければならないのが欠点。水や土や重力や空間のエレメントは相手に強い衝撃が加わり弱らせてしまうのだ。
飛び蜥蜴は寒い季節は多少動きが鈍るけれど、魔力を使って体を温めて活動を続ける。だからこうやって寒い時期の剪定に出ているだけでも若い個体が襲い掛かって来るのだ。僕の撃退を何度か経験した個体は襲って来る事が無くなるけど。若い個体は動くものは全て餌だと思ってしまうらしく襲い掛かって来る。特に巨大樹の実の落果が少ないため生き物を寄せる力が弱くなり、この季節は飛び蜥蜴にとって獲物が減る我慢の時期だ。そんな時にのこのこ歩いて居る僕達は良い餌に見えてしまうようだ。
「私もパパと同じエレメント使いたいなぁ・・・」
「ママかナツに教えて貰うと良いよ・・・」
「パパに教えてもらいたい」
「僕がベムじゃなければ教えられるんだけどねぇ」
「私もベムになりたいなぁ・・・」
「どうやったらベムになるんだろうね・・・」
ママとナツは雷と光のエレメントは使えるようになったのでフユも使えるようになると思う。他のエレメントが使えなければ巨大樹の家で暮らし続けるのは難しいだろうけど、飛び蜥蜴の撃退ぐらいなら問題無いので収穫物に恵まれている巨大樹周辺で採取する事は僕が居なくなっても続けられる筈だ。
「暖かくなってきたらこの辺は一斉に花が咲いて綺麗だから一緒に見に来ようね」
「うん!」
僕とフユはアプの剪定を終えたところで、飛び蜥蜴を適当にあしらいながら巨大樹の家へ帰宅した。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「ただいま」
「体が冷えたでしょ、ママがお風呂を入れてくれているから入ってきちゃって」
「ありがとう」
「パパ早く入ろう!」
「ゆっくり肩まで浸かるのよ?」
風呂場に行って様子を見るとママが火と水のエレメントを使いお湯を貯めて居る所だった。
「もうすぐで溜まるからね」
「ハルママも一緒に入ろう?」
「あらあら・・・じゃあ一緒に入りましょう?」
「わーい!」
フユが産まれた後に風呂場を大きく改造したので全員で入る事が出来る。
「ナツも入らないか?」
「ご飯の準備の途中だけど・・・大丈夫っ!」
「ナツママも一緒なの?」
「嫌なのか?」
「ううん・・・」
フユは何故か少しだけナツに対し反抗期になっている。実の親として少し厳しく接しているため、甘やかしてしまう僕とママにべったりとなってしまうのだ。
服を脱いで風呂場に入るよ軽く体を流してざぶんと湯舟に漬かる。
「ふぃ~」
「ふぃ~」
フユは時々僕の口癖を真似る。寒い季節に風呂に入る時に思わず出てしまう声が面白いようで真似るのだ。
「仲が良いわね~」
「私パパが好だもんっ!」
「あら?私も好きなのよ?」
「ハルママも好きっ!」
「ナツママは?」
「好きだけど・・・時々怖い・・・」
フユはやはりナツの厳しさが苦手なようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます