第30話 湖面
土地というには広すぎる領域をもらってしまったけれど、特に何かをするつもりは無かった。森林の白は自然のままを好む性質がある。森を散策すると長年放置された手つかずの森で恵みは豊かでも貧しくも無いという感じだった。
森林の白の多く住む地域より南方にあるけれど標高が高いため気候はそこまで違わない、そんな感じの場所だった。
遊水池は周囲の山に染み込んだものが森の中心近くで湧いているようで澄んだ水がかなりの量湧き続けている感じだ。森林の白でも、最も水が綺麗な場所で無いと育たないという水草が遊水池のあちこちで見られるので相当に綺麗なのだろう。
「綺麗ね」
「こんなに綺麗な湖なんて始めて」
「泳がないか?」
「えっ?」
「泳いだ事が無い・・・」
「教えるから」
「えぇ・・・」
「危なくない?」
「僕がしっかり教えるよ?」
「怖いわ・・・」
「私やる!」
僕は服を脱いで裸になった。娘も同じように服を脱いだ。脱いだ服は風で飛ばされないように空間と時間で作った収納空間に入れておいた。
「じゃあママはしばらく見ていて」
「分かったわ」
「わわっ!冷たい!」
「体が冷えたら戻って来るから」
「休める場所を作っておくわ」
「まって!冷たいっ!」
「僕が良いって言うまで陸に上がっちゃダメだからね?」
僕は娘に水を手で掬ってバシャバシャとかけていった。「キャーキャー」言いながらも律儀に陸に上がらく逃げていく娘。「ほらやり返して」というとハッと気がついたようで「えいっ」と言ってやり返して来た。胸は平坦だけど手足が長くて健康的でとても可愛い。しばらくそうやってはしゃぎ続けた所でむすめに近づいて言って抱きしめた。
「ほら・・・もう水は怖くないでしょ?」
「えっ?・・・うん」
「とっても可愛かったよ」
「うんっ!」
「じゃあ少し深い方まで行こうか」
「えっ!ちょっと待って!」
「大丈夫・・・僕が支えて居るから」
「う・・・うん・・・」
「ほらママに手を振って?」
「ママー!!」
「ほら笑顔で振り返してくれてるよ」
「わっわっ深い!腰まで水がっ」
「首まで行くよ!?」
「えっ!足がっ!つま先しかっ!えっ?」
「ほら、僕が抱きしめてるから」
「足が付いて無いよ!?」
「大丈夫、僕は足が付いてるから」
「本当?大丈夫?」
「波が穏やかだから暴れ無ければ大丈夫だよ」
「うん・・・」
「ほら・・・胸の鼓動の音が聞こえるでしょ?」
「えっ?・・・うん・・・」
「僕のは早く無いでしょ?」
「うん・・・」
「ほら・・・体の力を抜いて落ち着いて胸の音を僕に合わせてゆっくりにするんだ」
「うん・・・」
「少しづつゆっくりになっていってるよ」
「うん・・・パパの胸の音を聞いてると落ち着く・・・」
「僕も同じだよ」
「パパとくっついている所だけあったかい」
「僕も同じだよ」
「パパ・・・好き・・・」
「僕も好きだよ・・・」
「うん・・・」
「・・・」
「・・・」
僕と娘はそのまま抱きしめあって胸の鼓動に音を落ち着かせていった。最初は2倍以上差があった鼓動も落ち着いていき殆んど同じになっていった。娘は僕の首の後ろに回している腕に少し力が入っているだけで殆どが脱力している。僕は足と娘の腰に回した手に少し力が入っているので普段より少しだけ鼓動が早い。だから娘と共鳴するように胸の鼓動が同じになるのに余り時間がかからなかった。
「ほら・・・今は全く同じタイミングだよ」
「うん・・・」
「そのまま脱力しているんだよ?」
「うん・・・」
「僕に体を委ねるんだよ?」
「うん・・・」
「首に回している腕も緩めて」
「うん・・・」
娘の体は僕が腰の後ろに回した腕だけになった。ゆっくり娘の体を回転させ後ろから抱きしめる形にしていく。少しだけ浅い場所に移動しながら娘を仰向けに湖面に浮かべてる。娘の首後ろと腰の後ろを少しだけ支えて、殆ど自力で浮かんで居る状態を作る。
「ほら・・・体に力を入れなければ体は自然と浮くんだよ」
「本当だね・・・不思議・・・」
「胸に空気を入れているからね、足の方が少し沈むけど胸から頭の方は浮くんだよ」
「なんかゆらゆらしてて気持ちいい」
「ママのお腹の中にいた時がこんなに感じだったのかもね?」
「そっかぁ・・・」
「しばらくこうしていて慣れたらママの所に戻るよ?」
「泳ぎの練習は?」
「今度は顔を水に付ける練習するからね、今は水に慣れて怖がり過ぎないようにするのが大事なんだ」
「そうなんだ」
「次はママに同じことするからね」
「ママ・・・私より水を怖がってたよ?」
「ママの方が少しだけ時間がかかるかもね」
「いいなぁ」
「どうしてだい?」
「パパに長く抱きしめて貰えるんでしょ?」
僕は娘の腰に回している手を外して両手で娘の首の後ろに手を回して正面から抱き合うように体を寄せた。娘も僕の首の後ろに腕を回して抱きしめ返して来た。体の方が離れていこうとしたので娘の腰に手を回して抱き寄せると、娘は僕の体の後ろに足を回してギュッと締め付けて来た。
「しばらくこうして抱きしめあっていようか?」
「うん」
「胸の鼓動早くなってるよ?」
「パパもだよ?」
「うん・・・」
「パパのモノ固くなってるよ?」
「愛おしくなること言われて興奮しちゃったんだよ」
「入れる?」
「ママが待ってるし体が冷えちゃうから後でね?」
「うん」
僕と娘は鼓動がまた落ち着くまで静かに抱きしめあっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます