第8章 恋愛編

第29話 土地

「ヤシオリの雫に怪物ごろしね・・・」

「はい、今年の酒造組合コンテストで優勝した醸造部門と蒸留部門の酒です」

「とっても美味しいわ」

「今年はどっちもヤシオリの実を使ったお酒なんだね?」

「やしおりは香りが良いですから」

「飲んだ後に体が火照るのよね」

「それは催淫効果だよ」

「副作用はありませんから」

「それにしても良いお酒になって来ましたね、僕の作ったものより美味しいんじゃない?」

「酒神様のお酒は別格ですよ、まろやかで不思議とみんなが笑顔になる、酒神様の御心の様なお酒ですから」

「私もあなたのお酒は特別だわ」

「ありがとう」

「さすが酒神様の奥方だ、良く分かってらっしゃる」

「うふふ」

「分かり過ぎて飲みすぎないでくれよ、じゃあいつもの様に受賞者のお酒を20壺づつ貰ってていくよ?」

「はい、既にご用意しております」

「飲み比べが楽しみねぇ」


ヤシオリの木の栽培が始まって100巡たった。ヤシオリの実の果樹園は各部落に一箇所づつ存在するような普及っぷりを見せている。周囲の生き物をおびき寄せる性質がある事から分散させると管理するのが大変になるらしく、栽培地を集中させる様になっている。枝葉がどんどん伸びて放置すると大木になってしまうらしいけど、さらに放置すると栄養不足になって枯死してしまうらしい。果樹園では定期的に剪定を行い低木栽培をしている。肥料を与えれば与えるほど実を多くつける事から世話のしがいがあると各地で喜ばれている。栄養価も高いので、体調が変だと思った時はとりあえずヤシオリの実を食べて様子を見るなんていう風に言われる様になった。

ヤシオリにちなんだイベントも各地で行われる様になった。農業組合では実の大きさと重さと甘さと香りの強さを採点するコンテストを開催しているし、酒造組合ではヤシオリ酒だけの優劣を決める酒神杯を開催している。また狩猟組合はヤシオリ杯と呼ばれるヤシオリの生き物をおびき寄せる性質を使った狩猟大会を開催しているし、旅館業組合や飲食店組合ではヤシオリを使った創作料理のコンテストが行われている。

製薬組合では今まで誰も注目していなかったモムの木の種と果皮に含まれる有毒物質を抽出に成功し、それの摂取量を管理する事で麻酔薬に出来る事を発表した。医術の発展に寄与する発明でさすが薬神の弟子だと関心がしてしまった。ちなみに麻酔薬を作り今まで不治の病とされていた腹腐り病の病原の摘出手術の成功させた薬神の弟子は現在医神と呼ばれている。

僕は総産業組合にヤシオリの権利金で基金を作ってもらい、製薬組合と薬神の弟子をトップとする医術組合の設立を支援した。僕はその功績で山岳の赤総長から徳神の称号と、医術組合から医神の友の称号を与えられた。

現在山岳の赤の都市には世界中から進んだ医学と薬学を学ぶ学生が訪れている。

またその医療に一抹の望み持って訪ねる難病患者も訪れている。

実際に山岳の澄んだ空気と綺麗な湧き水と体に良い温泉と体に良いヤシオリの実と山岳の赤の人の陽気な一がと高度な医療に癒やされ、地元では不治と診断されてた患者が回復するケースは多くあった。

山岳の赤の集落ではどこでも好景気に湧いていて、今まで難所だった道がどんどん整備されていった。おかげでさらに部落にごとの行き来が活発化した事と、山岳の外からの出入りがさらに活発化する事で経済活動だらに進むという好循環が生まれる様になった。


僕は山岳の赤総村長から一箇所土地が与えられた。周囲を山に囲まれた湧水地のある森を丸々くれたのだった。

その森までの道は渓流沿いのまともに整備されていない場所を登らないとたどり着かない事と、周辺に目ぼしい鉱脈が無いことから放置されていた場所だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る