第28話 塩折

「酒のために産まれた様な木ですな」

「どうやら成功したようですね」

「実自体も味が良いのですが、木に成った状態でも完熟し始めたものは既に酒になり始めていました、山岳の赤が夢にまで見た酒のなる木ですなあれは」

「完熟を始めると強い匂いを発して周辺から様々な生き物を呼び寄せるませんでしたか?」

「えぇ・・・おかげで狩りが捗ると狩人じゃら喜ばれましたな」

「それはそれは」


肉を食べる山岳の赤の人にとっては有り難いことなのか。


「狩った生き物を処理した際に出る血と焼いて砕いた骨と食べない内臓を雑草と混ぜて肥料にしたものを与えると良く実が成ります」

「なるほど」


なさに山岳の赤の人が飛び蜥蜴の役割をしてくれて居る感じだな。


「種が無いのも食べやすいし酒にするときも処理が簡単で・・・素晴らしいの一言です」

「それは良かったです」

「名誉顧問にはあの木の名前を決めて欲しいのです」

「えっ?モムではダメなのですか?」

「あれはモムと呼んでも良いものではありませんぞ」

「そうですか・・・」


酒に由来する名前・・・バッカス?・・・安直か・・・せっかくだし1回目の生で生きていた国に由来する名前にしようか。


「ヤシオリの実ではどうでしょう?」

「どんな由来のある名前なのですかな?」

「8つの首がある巨大な蛇の怪物を退治するために酔わせた酒の名前がヤシオリの酒だったという物語があるんです」

「はははっ!そんな怪物が倒れるほど飲んだ酒ですかっ!怪物殺しの酒!まさにあの実の名前に相応しいですな!」


この程度なら神の祝福にかからないらしく、言うことが出来た。八塩折之酒は1回目の生の国の古い伝説であるヤマタノオロチ討伐で登場する酒の名前だ。米のお酒でなく果物、雑穀、木の実で作ったお酒だったので。


「ここから先は総産業組合の方がお話したいそうなので名誉顧問には道々お願いしたいのですが・・・」

「あぁ・・・権利の話ですか?」

「えぇ」

「分かりました・・・」


その後ママと共に総産業組合に行き、応接室で酒造組合長と談笑しながら待っていると、総産業組合長の他に顔馴染みになっている薬神の弟子である製薬組合長と酒造組合で接ぎ木の相談をしていた時に同席してもらった農業組合長がそこに現れた。

権利について話し合ったところ。酒造組合だけでなく農業組合、製薬組合から生産許可の話があるらしい。果物自体の商品価値の他にも、あの生き物を寄せ付けるあの匂いの成分には副作用の無い催淫作用があったことや、生き物をおびき寄せる効果は狩猟者から罠や囮用に使いたいと打診が既に出ているらしい事が伝えられた。

100巡間2割の権利の打診があったけれど1割にして貰った。今回は酒造組合への恩返しのつもりだったし、既に使い切れないほどお金があるので困ると言ったのだ。

組合長の面々から大爆笑を受けた後に了承され、その代わり称号と年金を出すと言われた。

どんな称号か聞いたときろ、総産業組合と学校設立基金管理組合からは正式に学神の称号が、酒造組合からは酒神の称号が、農業組合からは永世名誉委員の称号が与えられる事となった。

また山岳の赤の総村長から孤児院乳児院設立基金管理組合設立のへの感謝と共に仁神の称号が贈られている事を伝えられた。

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