第19話 蒸留

ゆっくりと山岳の赤の集落を歩きながら着実に先を進んだ。途中で巨大樹の実やアプやカラの実の大量に成る、気候が寒くなり出す少し前に、空間と時間のエレメントを使役して巨大樹まで転移し、近くの森で採取を行なった。それ以外は非常にのんびりとした旅を続けて過ごした。


山岳の赤の人たちは他の種族の来訪を歓迎する性質があるのか僕以外の森林の白や草原の緑や密林の黒と言われる種族と会うことがあった。

僕以外の森林の白の人は、森で採れる恵みの加工品や川で採れる砂金や宝石の原石を、鉄やエレメント鋼の道具や宝飾品と交換しているようだった。

草原の緑の人には草原の緑の多く住む地域の向こうの砂漠の茶という種族と、その先にある大河の黄という種族を教えられた。大河の黄は自らを神の子孫であると自称し多種族刈りをする地域や奴隷制のある地域があるので訪れる際は注意するように教えて貰った。

密林の黒の人には森林の白を毛嫌いする人が多いから気をつけるようにと言う事と、海を超えた先に荒野の紫や火山の青という種族が居る別の大陸がある事を教えられた。

ズングリムックリとした山岳の赤や大人でも小さな子供の様な草原の緑に比べて、密林の黒は髪質と髪の色と肌の色が違うだけで、姿形が森林の白ととても似ていると思った。エレメントを見る事が出来て使役する魔法を使う所なども非常に似通っている。森と生き、死んだら木の苗床なって森の一部になるという死生観も似ていた。寿命が1000巡を超えるという部分も似ている。ただし肉食や昆虫食をするところは少し違った。

僕は元々は森林の白と密林の黒は同じ種族で、北方に適応した森林の白と赤道直下に適応した密林の黒なのでは無いかと思った。森林の白を毛嫌いするのも同族嫌悪なのかもしれない。森林の白でも肉食すると曲がりくねったt良くない木になると言う言い方するし、もしかしたら密林の黒の肉食を揶揄した言葉だったのかもしれない。


蒸留酒の入った壺はどこでも人気で、山岳の赤の住む地域で1番大きな都市と呼ばれるエレメント鋼の1番の名工と呼ばれる人から、1壺で好きなものと交換すると言われ9壺で立派な剣鉈と鉤爪が装着出来る左右の手甲と足甲と胸当てと鉢金と首当てと背負子に載せられる金庫にもなる鍵付きの箱を作って貰った。

またその都市の総産業組合という組織から蒸留酒の作り方を教えてくれと言われ、エレメントを使役してでの実演を行なった。結局街のエレメント鋼の名工達の殆どが集めらる事になり、その原理について説明も交えて実演し続けた事で1巡の滞在期間で蒸留器の雛形を完成させる事に成功した。その開発の成功により、蒸留酒だけで無く、薬草の有効成分の抽出や濃縮にも成功したそうで、僕に100巡間の山岳の赤の中で蒸留器で生産する商品の売上の1割の権利が与えられる事になった。ちなみに3割がエレメント鋼の職人達、1割が総産業組合に割り振られるらしい。

また宝飾品作りが盛んな街ではママだった女と娘に再開出来た時に渡そうと、白金のシンプルな指輪をペアで作って貰った。森林の白には相手に指輪を渡すという習慣はないけれど、1回目の生ではとても意味のある装飾品だった。娘の為に作ったのは余計だったかもしれないけれど、なんとなく1回は僕と娘は夫婦になる、そんな気がしていた。

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