第18話 宴会
「また来てくれよ!」
「近くに寄ったら温泉だけにでも入って行くでも良いからな!」
「今度はもっとご馳走用意しておくぞ!」
「酒有難うなっ!」
「また売りに来てくれよっ!」
「また是非寄らせて貰います!」
非常にあつい見送りを受けて村を後にした。背負子には村の特産である岩塩と根菜から作るという砂糖と山菜と見事な鉄製の調理器具や採取道具が積まれている。僕の価値観からすると貰いすぎだが彼らの価値観からすると少なすぎらしい。蒸留酒の存在はそれほど衝撃だったのかもしれないな。
村で通常に飲まれて居たのは、砂糖を作れるという根菜から作るという酒精は低くてクセのある匂いが強いお酒と、芋を女性が口噛みして作るという酸っぱいお酒と、もっと上の村から運んで来るという穀物で作ったというどぶろくの様な酒の3種だった。僕にはどぶろくの様な酒以外はクセが強すぎて一杯だけ貰って遠慮してしまった。
「温泉は最高だったなぁ」
男女共に胸の膨らみ以外は見分けが付かない毛むくじゃらの人たちだけど、陽気で気の良い人たちだった。酒が入ると顔が真っ赤に上気するので赤髪だから山岳の赤なのか顔が真っ赤だから山岳の赤なのかそれとも両方なのか分からなくなる。
それにしても他の酒も飲んでいるのにあんなに酒精が強い蒸留酒を毎日1壺を子供以外の10人だけで開けていく。滞在したのは3晩で最初にお礼で渡した3壺は空になった。村の産物と交換した残り6壺もそう長くは持たないだろう。
山岳の赤の子供たちは毛むくじゃらでは無くとても愛らしいかった。1番目の生で特殊な性癖を持った人なら狂喜乱舞しそうなレベルだと思う。産まれて15巡もすると全員毛むくじゃらになるらしいけどね。けれど産まれてすぐの子でも乳を飲みながら酒精の少ないお酒を飲んでいたところは、これが山岳の赤なんだと思った。
僕は毛の薄い見た目のせいか子供達にとても懐かれた。昼間は一緒に遊んで温泉に入って村長の客間で一緒に眠った。だからか村での別離の時に大人達の周囲で子供達にギャン泣きされて居たのだ。
「また絶対に来るから!」
村の門から見えなく曲がり角でもう一度振り返り手を降って大声で叫んだ。村人たちはまだそこで見送っていてくれた。僕の叫びは山々に響いて居るのできっと声は届いただろう。案の定村の方からも見えなくなっているのに別れの言葉が聞しばらく聞こえていた。
村から離れてしばらくした所で村で酒と交換したものと、村に入る前に背負子に背負っていた内容に交換して奥に進んでいった。
目的地は宝飾品の生産が盛んだという町と、エレメント鋼と言われる森林の白や密林の黒の様にエレメントを使役する種族が貴重品と交換に来ると言う製品を作っているという都市だ。
山岳を丸々超えるぐらい長い距離だけど途中にいくつもの村があるそうなのでのんびりと歩いて行こう。時間はたっぷりあるし、僕は山岳の赤達があんなに気に入る蒸留酒をいっぱい在庫で持っているのだ、どこでも歓迎してくれる事だろう。まだ暖かくなって来たばかりでこれから暑くなってくる。寒くなって来るだろう2分の1巡後までに目的地に付ければ良いのだから。
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