第6話 苗木

(はいタッチ)

(立派よ私のシン)

(ママ抱っこ)

(はいはい)


季節が2巡りすると僕は歩く事が出来て話も出来る様になっていた。また魔法の訓練もしてこの年にしては強い力を持つようになっているらしい。

金髪のショートカット、色白な肌、青いで少し細くつり上がった目、細長い耳、スレンダーな体、樹上に家を作り生活をする種族。1度目の生ではエルフと呼ばれる空想上の生き物に似ていた。

この種族は自らを森林の白と呼ぶ。他にも密輪の黒や平原の緑や山岳の赤など暮らす場所と色で分けた他の人型の生き物が居るらしい。

森林の白は長い時間を森で暮らしたあと、死ぬと最後は丁重に土に苗木と共に埋められる。死んだ後も木になって森の1つとなるという死生観を持っていた。


ママは僕が発声練習を始めた頃に僕にジェスチャーで僕に決して大人になるまで2人っきりの時以外は話さないように伝えて来た。そのパパが採取に出かけて居ない二人っきりの時に僕に言葉を教えてくれながら、何故話してはいけないかを教えてくれた。

僕の様に生まれながら知恵を持つ存在をベムと呼ぶのだが、森林の白ではベムは生まれたばかりの子の精神を食い殺したラーマと呼ばれる悪いものに乗っ取られた邪悪な存在としての殺してしまうというしきたりがあるらしい。だからパパにもこの事は知られてはいけないということらしい。


魔法はエレメントと呼ばれるものを使役する事によって発動できると教わった、魔法を覚えるにはそのエレメントの特性を理解すればエレメント自体が向こうから近づいて来くれる。産まれた時から見えていた周囲をキラキラ様々な色をした存在にその特性の知識がある事を心の中で念じ魔力を与えたら、たらそれで使役に応じてくれるのだ。

僕は2度の生、特に1度目の生の知識のおかげでエレメントを特性を理解し使役する事をとても早く理解する事が出来た。火のエレメントは燃焼三条件である可燃物、酸素、発火点を理解している事を示せば使役に応じて貰え、水のエレメントは水の化学組成や固体、液体、気体の三態を意味を理解すれば使役に応じて貰えた。風のエレメントは圧力差による流体の移動と気体の概念を、土のエレメントは元素記号表を理解している事を示せば使役に応じてくれた。他にもプラズマや電気というものを理解している事を示して雷エレメントを使役する出来た。あとは光とか闇とか無とかとかと呼ばれて見えるけれど使役できないものとされているエレメントも使役する事が出来た。それは光や時間、空間、重力のエレメントで相対性理論や加速度や波動やベクトルやクーロン力といった大学で学んでいた理論物理学を理解している事を示す事で使役出来てしまった。それはママにとても驚かれいっぱい抱きしめられた。

これら前世の知識により使役出来るというやり方は祝福により伝える事が出来ない事に該当するらしく周囲に教える事が出来ない。だから出来た事はなんとなくやったら使役出来てしまったとママには言うしか無かった。僕が泣きそうな顔でそう説明するのをママが優しくあやして慰めてくれた。

祝福のおかげか魔力の成長はとても早かった。特にエレメントを使役出来るおかげで魔力を枯渇から回復を繰り返す事でどんどん魔力量を鍛える事が出来ていた。


(今日のご飯はなぁに?)

(アプの実とカラの実よ?)

(わーい)


アプとカラはこの季節によく採れるとても甘い実だ。1度目の生にあったリンゴとナシに似ている。それを摺り下ろして食べるのがこの時期の僕にとっての御馳走になっている。なにせまだ何も歯が生えて居ない、それに森の白は基本的に肉を食べない。ママも植物だけしか摂取しないのだ。本当は食べる事は出来るようなのだけど、死んで木になった時に良い木にならないというのが理由でパパとママが所属する群れでは肉食は禁忌とされていた。たまに2度目の生の残滓で血の滴る肉を食べたくなるが、3度目は草食の生き物として生を受けたと思い我慢しつつ母親におっぱいを強請り我慢している。

ちなみに森林の白は季節が50巡りするぐらいまでは食事の他に母の乳を貰うのは普通の事なので異常な事ではないみたいだ。1回目の生でも4歳ぐらいまでは母乳での育児が推奨されていた筈だ、彼女が出来た時に将来の事まで色々と調べたから間違いはない。死ぬまで1000巡を超えると言われて居る1度目の生より10倍の寿命を持つ森林の白ならそれぐらい長く母乳で育てられるのだろう。それに肉を採らないという事は当然粉ミルクなどという便利なものも無いという事だ。だから赤ん坊時期の必須な栄養を与えるためには母乳を非常に長期間摂取し続けるらしい、森林の白は成人するまで100~150巡りぐらい時間がかる。この種族にとって2歳などまだ1度目の生なら生後2ケ月目の赤ん坊レベルの感覚なのだ。

それなのに歩いて喋れてエレメントを使役しているのは成長が早すぎというものだけど、早く力をつけて群れのボスに・・・いやこれは2度目の生の欲望の残滓だな・・・僕は誰よりも立派な大人になってきちんと葬られ、その後も大切にされる苗木の栄養になる事を決めているのだ。だから体と魔力を鍛える事に躊躇するつもりは一切ないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る