第3話 黄泉

「やぁ!」


(ん?・・・ここはどこだ?)


「ここはあの世って奴だね」


(という事は僕は死ねたのか?)


「そうだね」


(これから僕はどうなる?)


「ずっと僕と話をする事になるね」


(話?)


「君が話に飽きるまでね」


(話を聞いてどうするんだ?)


「飽きないと次に向かわないからね」


(次?)


「来世だね」


(あなたは神なのですか?)


「そうだね」


(神とは死んだ人全てにこんな事をしているのですか?)


「人だけじゃないよ」


(えっ?)


「意思を通わせられるもの全てにだよ」


(人以外の知能の高い生き物の事ですか?)


「それだけじゃなく君たちが植物や虫や微生物と呼んで居るような存在も含めてだよ」


(えっ?それって物凄い数になるんでは?それにそんな生き物に意思があるのですか?)


「僕は神だよ?」


(神ですか・・・)


「僕はいくらでも偏在出来るし相手に合わせて存在も変えられる」


(存在を変えるですか?)


「君には君に合わせて人と話が出来る存在になっているけれど、植物には植物の、微生物には微生物に合わせて存在を変える、増えたい、大きくなりたい、食べたい、そういうたった1つの会話しか出来ない存在もあるけれど、それはそれでその生き物の意思なんだよ」


(それはすごい事ですね)


「神だからね」


(僕が話に飽きたらどうなるんですか?)


「ゆっくりと次に旅立っていくね」


(消えるのでは来世とは違うのでは?)


「無垢な意思になってもう一度世界に散らばるから来世だよ」


(無垢な意思ですか?)


「欲望があっても話以外なにも出来ない状態だからどんな生き物でも段々と意識が薄くなっていくんだよ」


(その状態が無垢だというのですか?)


「そうだね」


(じゃあ僕が大人しくなるまでしばらく話をお願いします。)


「君みたいに大人しいと無垢になるのに少し時間がかかるかもね」


(そうなのですか?)


「色々暴力的に暴れる人ほど急に大人しくなって無垢になったりするからね」


(そうなんですか)


「でも結局変わらず無垢になるよ」


(じゃあ少し長いけどお付き合いをおねがいします。)


「あぁ・・・好きに話すといいよ」


(でも神様は黙っていた方が早く無垢になるんじゃないですか?)


「そうすると悪いものが残ってしまうんだよ」


(悪いものですか?)


「僕の都合によるもので人では理解出来ないものだね」


(神にも都合があるのですか)


「そりゃああるよ神にも欲があるからね」


(どんな欲があるのですか?)


「それは神以外の生き物に似ているね、君たち風に言えば生きたい、食べたい、増えたい・・・そんな感じの欲だよ」


(神とは意外に俗物なのですね)


「僕の上にももしかしたら僕にとっての神様のような存在がいるのかもね」


(分からないのですか?)


「まだ死んでないからね」


(神は死ぬんですか?)


「死ぬね」


(そうなんですか)


「何柱の僕と同じ存在が産まれては消えるのを見ているからね」


(神は複数いるんですか)


「居るね」


(どれぐらいの数がいるのですか?)


「僕にもわからないな」


(神にも知らない事はあるのですか)


「君は君のいた星に居た生き物の数を知って居たかい?」


(わからないです)


「つまりそういうことだね」


(なるほど)


◆◆◆


「君はあと少しで無垢な状態になるよ」


(・・・)


「じゃあ次の君の欠片の1つが来るまでさようなら」


(・・・)

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