第2章
第8話 居候
「お主の願い事はなんなのじゃ⁈」
そこに立っていたのはついさっき帰ったはずの彼女だった
「……忘れ物したのか?」
「何も忘れてないのじゃ‼︎」
「外も暗くて危ないもんな、最寄りの駅まで連れて行って、」
「暗いから帰れない訳じゃないのじゃ‼︎」
「……金なら出す、」
「だから妾は神様なのじゃ‼︎」
あまりの衝撃であの時の神様呼びをした自分が馬鹿馬鹿しくなり頭を抱える。
「だったらどうしたんだ……神様の世界に帰ったんじゃないのか、」
「そうなのじゃ‼︎ 本来なら願いを叶え終えたらそのまま帰れるはずなのじゃ。でも帰れなかったのじゃ‼︎ 妾が思うにお主の願いが……」
ドアを閉める
「なぜ閉めようとするのじゃ‼︎ 妾を締め出すつもりなのか⁈」
「これ以上きみの相手をするのは御免なんだよ! 願いを叶えたいなら他所でやってくれ‼︎」
力強くドアを閉めようとするが彼女も抵抗し、壁に足を立てて必死に抵抗してくる
「妾はお主の本当の願い叶える為にやって来たのじゃ‼︎ お主がちゃんと願っておれば今頃妾も帰れていたのじゃ‼︎」
「なら願ってやるよ! 今すぐ天界へお帰りになさってくださいませお願いします‼︎」
「そんなぞんざいな願いで帰れるなら苦労しないわい! 妾を足蹴にするのなら神の力でお主の寝床を今度こそ消し去ってやるぞ‼︎」
そう言い放ち、空いた左手に力を入れて脅してくる
「なっ……‼︎ そんな悪辣な手段を使って、さてはお前疫病神だろ! なら神社へ行ってこい、そこの神主さんにお祓いされたら帰れるだろうよ!」
互いに一歩も引かず言い争っていると
「うるせーぞ‼︎ そこのガキ2人‼︎」
向かい側の家主が怒号を上げ割って入ってきた
「……ッ⁈ ご、めんなさいぃ~! なのじゃぁ~!」
慌てて謝り部屋の中へ入る。彼女との言い争いで喉が渇いたのでお茶を入れ、床に腰を下ろし一旦落ち着く
「……で、なんでお前も入ってきてるんだ」
そこには、同じくお茶を飲みベッドに腰をかけ一息ついている彼女がいる
「だから何度も言っておるじゃろ、お主の本当の願いを叶えるまで妾は帰れないのじゃ」
さっきの言い争いでお互いに疲れたのか、声を張って言い返すようなことがなく弛緩した時間が流れていた
「だから早くお主の本当の願いを言うのじゃ」
ベッドをギシギシと揺らしながら説いてくる
なんで家主の俺が床に座ってて、転がり込んできた奴がベッドに座っているんだよ――
「本当の願い事って言われても全然思い出せないし心当たりが無いんだが」
「はぁ?! そんな事ないのじゃ! 妾はお主の願いを叶える為に降りてきたのじゃ、
「そんなこと言われてもなぁ……」
事実、1番の悩みであった部屋の片付けはさっき終わったし他に叶えてもらいたい事が全く思い当たらない
『くぅ〜、』
しばらく頭を悩ませていると、静まり返っていた空間に彼女のお腹から情けない音が鳴り響いた
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