第5話 初めてのお片付け1

 「あ~、じゃぁ……」


 また普通の女の子に戻ってくれと願ったら、今度は怒りで泣いてしまうのではと思い飲み込む。何か手頃な悩みはないかと周りを見渡すが、あり過ぎて悩んでしまう。……部屋が汚い。


 「この部屋を片付けてくれないか?」


 「あぁそうじゃ、目を覚ました時に思ったのじゃ。床にはペットボトルやら箱やらが転がっていて、机の上にいたっては食べ終えたモノまで散らかっているではないか。今まで口を詰むんできてはいたがこの部屋くさいのぉ、まるでゴミ箱の中ではないか。こんなゴミ部屋に住んでる奴の気が知れんわ」


 ピキッ、


 「まぁよい、この程度の願い妾の力ですぐに解決してやろう! 妾の神聖な力を刮目せよ‼︎」


 そう言い放ち両腕を前に伸ばして目を閉じた。次の瞬間、部屋全体の空気が振動した。


 「……⁈」


 彼女が伸ばした手の先の空間が歪み、神々しく光り輝いたのだ。その一瞬はとても美しく、他の誰がどう見ても神様だと確信するほどの神々しさだった。そう、その一瞬は……。


 神々しい光が一際大きく輝き、伸ばした手の先から光が消え小さな黒い球体が現れた……。次の瞬間、もの凄く強い引力が黒い球体に発生し何もかもを吸い込んでいく。電気が消え、壁・床・天井が悲鳴を上げる。俺は吸い込まれぬようベッドの足にしがみつき耐える、その時に見た彼女の印象は神様とは程遠かった。


 「待て! 待て! 待て、!! やめろっ!!」


 これ以上は俺もこの部屋も危ないと察し、反射的に彼女の足を掴む。


 「ひゃあ!!」


 足を引っ張られ、シーツに滑らしベッドに倒れ込む。すると黒い球体が消え、張り詰めた空気が元に戻った。


 「何するのじゃ! 今お主の願いを……」


 「バカか! 部屋を片付けてほしいと言って部屋ごと片付ける奴が何処にいる‼︎ ここか⁈ ここにいる自称神様か⁈あのまま吸い続けてたら天井と床も抜けてたぞ! 上も下も人住んでるだぞ、バカでも少し考えたらわかるだろ! 嫌がらせか? 嫌がらせなのか⁈ 賃貸なんだぞ‼︎ 敷金が返ってこな……」


 「わかったのじゃ! ごめんなのじゃ‼︎ だから腕を離してぇ!」


 煮えたぎっていた頭が冷静になり今の状況を確認してみると、俺は彼女の両腕を押さえつけるようにしてベッドの上で押し倒している体勢になっていた。

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