第119話
【三人称・
C市ダンジョン都市、地下第7階層、
「ま、まさか……」
「む……。どうした? いったいどうしたというんだっ!」
赤阪の異変に気づいて、
「ワーウルフの存在反応が消えた……」
「ワーウルフまでだとっ!」
愕然とする赤阪の顔を見た
「
WEB会議モニターに映っている金主の一人、
「そ、それが……」
「ワーウルフはたしか、『石拾い人夫』、数千人分の魔石採掘能力があると言ってたね。まさか、それが失われたとでも言うんじゃないだろね?」
「いや……、その……、えっと、つまり……」
「C市ダンジョン開発プロジェクトでは、出資者たちへの資金運用の透明性が求められるんだよ、わかっているかい?」
「はい。まったくもって、そのとおりでございまして」
「従魔を召喚できる古代アーティファクト発掘には相当な資金がかかったはずだ。まさか、他にも失われた従魔がいるとかじゃないだろね? そのあたり、どうなっているのかね、
「は、はいっ。資金運用については、まったくその通りでございまして、透明性が求められまして……、その……」
「他に失われた従魔がいるんだね? どれが何体失われた?」
「そ、それが……」
「それが、どうしたんだい? はっきりしてもらわないと困るよ」
「他には……、スケルトン・ウォーリアが8体」
「ほう……。それは……」
「も……、申し訳ございません。すみやかに対策させていただきます。どうかもう一度だけチャンスを……」
「でも、
「ど、どうか、お情けを――っ!」
「残念だがね
「ひえええっ」
WEB会議のモニターのスピーカーから、AIの声が鳴った
《
本来、
足りない信用度を埋め合わせするために、
《投票が開始されました。出資者さまは、肯定か否定かの投票を行ってください》
AIの機械的で無機質な声がつづく。
《A組長 出資率22パーセント 否定》
《B氏 出資率18パーセント 否定》
「いやあああっ。やめてーっ」
《C氏 出資率17パーセント 肯定》
《D氏 出資率16パーセント 肯定》
《E氏 出資率9パーセント 否定》
《F氏 出資率8パーセント 肯定》
《G氏 出資率6パーセント 肯定》
《H氏 出資率4パーセント 肯定》
《西ノ宮総一朗
《否定48パーセント、肯定52パーセント。
「ひいいっ。はぁ……はぁ……、たっ助かった……。」
監視モニターを映し出す分割画面のかなりの部分がブラックアウトしていた。ブラックアウトする分割画面は、
「ええいっ、何がおきてるんだっ! 入口から地下第6階層までのカメラの大半が映ってねぇじゃねぇか。オペレーター!」
股間を濡らしながら、
「そ、それがわかりません」
「この役立たずが。ふざけんな、クソったれめ! わかんねぇじゃ、済まねえんだよ。
赤阪の従魔の一人、『デジタル・ソウル』である。デジタルソウルは、魔石採掘現場から戻ってきたところだった。
「本日の採掘ノルマを達成し、ただいま戻ってまいりました。我が尊き
デジタル・ソウルは、赤阪の前に進みでると、うやうやしく礼をした。
「いいところにきた。デジタル・ソウル」
「恐れながら、何かご用向きでございましょうか? 尊き
「何者かにワーウルフが倒された」
「それはそれは、まことに遺憾でございます。ですが、あの者の戦闘力は、非常に低かったと存じております」
「そのとおりだ、デジタル・ソウル。ワーウルフより、おまえのほうがはるかに強い。命令だ。このダンジョンに侵入している何者かを、すみやかに始末しろ」
デジタル・ソウルは、現在、赤阪が従える最強の従魔だった。
「かしこまりました。ただちに遂行させていただきます」
デジタル・ソウルは、背筋をぴんと伸ばし、深々と頭を垂れた。
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