第107話

 今日は、花凜達のパワーレベリングをするためにA市ダンジョンまでやってきていた。


 メンツは、

 ・俺

 ・花凜

 ・織田結菜ゆいな

 ・翔子2

 の4人である。


「直くん、今日はダン校で実際にダンジョンに入っての実習って聞いたけど、参加しなくてよかったの?」

「あれはA組だけの参加だ。赤阪指導員の意向で、これからはA組の実戦訓練が増えるらしい」

 俺は、F組なので参加は求められてない。

 メガネ少女の花凜は、中級者用・有料DLCのミスリル織りローブ。修道女のようなデザインの服だが、全体が白く清楚な感じがとてもかわいい。花凜の職業ジョブは、ヒーラー。


「直さま、どう、今日のコーデは? バチクソかわいいでしょ! あたしのこの姿。まんま、清純派美少女? 失われてはいけない超キチョマンって感じ?」

「自分で、キチョマン言うな」

 茶髪ギャル少女の結菜ゆいな職業ジョブは、バッファー。装備は花凜と同じミスリル織りローブ。結菜ゆいなが着ても清楚に見えてしまう。モデルのように、すらりと背が高いから見た目が映える。まるで清楚ビッチのようだ。……本当のこいつの中身は処女ビッチなんだけどな。


「ですぅー!」

 うん。かわいい。

 翔子2は10歳くらいに見える美少女だ。いつものメイド服姿。その実態は、ショゴス・ロードが2つに分離したうちの片方である。

 翔子2の職業ジョブ斥候スカウト。本来の武器は弓だが、今日は、花凜と結菜ゆいなの後衛2人なので、前衛をやってもらう。翔子2は片手持ち用イレブンミスリルナイン・ロングソードを2本。2刀流だ。


「そういえば、直くんのステータスウインドウから表示できるDLCってのに、いっぱいかわいらしい服あったねー。もう一度見てみたいな」

「えー、そんなのあるの? 見たいー」

「翔子2も見たいですぅ!」


 ゲーム『ファースト・ファイナル』には、美少女アバター向けのネタ装備が大量にあった。装備するとツインテールになるリボン、メイド服、ナース服、ミニスカ巫女服、猫耳カチューシャ……。ほんとうに、驚くほど大量にある。力入れるとこ間違ってるんだよ。ゲームバランスや、バグとりに力をいれてほしかった。


「仕方ないなあ……。これからレベリングするんだから、見るのはちょっとの時間だけだぞ」

 女は、こういうの見はじめたら、長いからな。

 俺が地面にあぐらをかいてウインドウに表示すると、花凜が右側の肩越しに覗き込んでくる。頬に花凜の気づかいが感じられる距離。

 そこはかとなく豊満なオッパイが俺の右肩にあたるが、本人は気づいてない。花凜は天然でちょっと抜けたところがある。そこが、かわいいんだけどな。花凜の胸の感触を楽しみながら、スクロールバーをつかって、さらに表示する。

「わー、このメイド服かわいい!」

「ほんとう、超ふりふりー! ガチヤバ!」

 花凜の言葉に結菜ゆいなが答えて、左の肩越しにのぞき込んできた。こっちも顔が近い。

 左肩に、ぐりぐりと豊満な結菜ゆいなのオッパイがあたる。


 ぐりぐり……。

 ぐりぐり……。

 ぐりぐり……。


 あ……、こいつわざと意識して胸を押し付けてるな。まったく、処女ビッチはこれだから……。男心がわかってないあ。本人が気づいてないのに、そこはかとなく当たってるのがいいんだよ。……まあ、でも、とりあえず、黙ってオッパイの感触を楽しんでおく。


「わあー。本当にかわいいですぅー!」

 翔子2が、あぐらをかいた俺の膝の上に乗ってくる。俺の胸元からウインドウをのぞきこむ。


「メイド服でもいろいろな色やデザインがあるんだねー」

「このピンクのメイド服かわいい。胸が大きくひらいて、ミニスカートのやつ」

「ですぅー!」


「直くん、どれがいいと思う?」

「直さま、これとあれと、どっちがいい?」

「ですぅー!」


「どれでも、みんな一緒だろ」

 たしか、デザインが違うだけで、中級者用なら防御力とかの性能は全部同じだったはず。


「「「全然違うーっ!」」」「ですぅー!」

「む……」


「かわいいー。こっちのクラシックな黒いのもよさそう!」

「めっちゃかわいいじゃん! 見て、こっちの赤いメイド服、リボンがいっぱいついててガチでバエると思うんだけどぉー?」

「ですぅー!」


 ……3人でやたらと盛り上がってる。

 ガールズトークに、ついていけないんだけど……。


「今日の狩りは、この服を着てやってみたいかも」

「どうせなら、可愛い服で、……みたい的な?」

「ですぅー!」


「おいおい……おまえら、見た目で選ぶな! これからレベリングするんだぞ! ……って、あれ? このメイド服、やたらと防御力と魔力補正が高いな」

 ゲーム『ファース・ファイナル』では、この服の有料DLCがリリースされたときには俺はもっとレベルがあがってて、レベル40未満向けの装備はちゃんと確認してなかった。どうして、ただのメイド服が、ミスリル織りのローブと同等の防御力や魔力上昇補正があるんだよ。おかしいだろ。有料DLCを売るために、ゲームバランスを無視したな。さすが超クソゲー運営なだけある。



  ☆☆☆



 見れば、3人の美少女メイドが俺の前に立っていた。3人とも統一された黒のドレスに白いエプロン。かわいいけど、どちらかというとゴシック風の正統派メイド服だ。

「カラフルなピンク色のメイド服とかのほうが、よかったんじゃなかったのか?」

「うーん、結局これがいいかなぁー」

「直さまに使えるメイドとしては、やっぱりこういう服がいい感じでしょ!」

「ですぅー!」


「直くんご主人さま、なんでも、お命じくださいませ」

 花凜が、芝居がかった大げさな動作でメイド服のスカートを両手で広げながら礼をした。

 ん? いま、なんでもって言ったよね。なんでもって! ん? ん……?


「あたしたち、直さまだけにだけ専属でご奉仕するメイド隊よ。直さまーっ!」

 抱きつこうとしてくる結菜ゆいなを腕で押し返す。「なんでも、お命じくださいませ。夜伽でも、なんでもしますからーっ!」

「だから、おまえは、恥じらいと奥ゆかしさを知れ!」


「ですぅー!」

 翔子2がキラキラの満面の笑顔で言った。うん、とってもかわいい。

「いい子、いい子……」

 なでり。なでり……。

 頭をなでてやると、翔子2がすごく嬉しそうな顔になった。

「わあーい! ご主人さまに褒められたですぅ!」


「……じゃあ、レベリングするぞ」

「「「はぁーい!」」」

 俺の声に3人が一斉に答える。


 しかし、そろいのメイド服を着た3人の美少女とパーティを組んで狩りをするなんて思ってもいなかった。

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