第100話


 演習の制限時間が終わり、AクラスとFクラスの生徒たちは、全員がアリーナ内に戻ってきていた。


 生徒たちの中には、西ノ宮千代や王子、北川たちもいる。


『さーて、今日の演習が終了したぞ! 今回参加したのは、2クラス合計80人、全20チームだ』

 アリーナ内に、実況アナウンサー桑原の声がひびく。『いよいよ、結果発表だぁーっ!』


 アリーナにえつけられた巨大モニターに、演習の結果が表示されていく。

 20位から、次々に発表されていき、ついに第3位が発表された。

『……さて、3位は北川裕二チームだ! 結果は10131.2魔石単位だ!』


「「「うおおおーっ!」」」

 アリーナの観客席を埋めつくした観客たちの声がどよめく。すごい盛り上がりだ。


 まだ、俺たちのチームの順位は、発表されてない。少なくとも2位までには入ったようだ。

 北川が俺達のチームに負けたのを知って、くやしそうににらみつけてくる。いいきみだ。


『次は、いよいよ2位の発表だ! さーて、1位になるのは、西ノ宮千代チーム、神崎直也チームのどっちだあああっ! これで演習の勝者が決定するぞおおおっ! 』


 ドドドドドド……

 銅鑼どらのような音がなってアリーナを盛りあげる。。

 こんな演出いるか? じらすなあ……

 すぐ隣に立っているキララも、緊張にゴクリとつばを飲みこんでいる。



『では第2位の発表だーっ。2位のチームは、90分で、なんと15621.0魔石単位を獲得したぞぉーっ! そのチームとは……


 ……西ノ宮千代チームだあああっ! ……というわけで、1位は神崎直也チーム! 獲得したのは、20782.5魔石単位だ!』



「やったあ! うわああああっ!」

 小山田、桜、キララが、3人同時に俺に抱きついてきた。


「やったよ、神崎くん。まさか1位がとれるなんて、思ってもいなかったよ!」

「これも、すべて神崎くんのおかげだわ!」

 小山田と桜は満面の笑みだ。


 しばらく、余韻をたのしんでから、小山田と桜が俺から離れた。それでも、まだ俺に抱きついていいる人物が一人いた。キララだ。


「うわああああっ!」

 いつになく、キララが号泣している。演習中は平気そうな顔をしていたが、内心は、そうとう張りつめていたのだろう。


 大宮司家のお家騒動がどうなっているのか、内部のことは俺にはわからない。

 でも、こういう公開されたところで、西ノ宮千代との勝負に負けるわけにはいかない、複雑な事情がありそうだ。


「キララ……」

「なに……?」

 俺の胸に顔をうずめていたキララが顔をあげる。


「どうせ抱きつくなら、防具をはずして抱きついてくれ。裸ならもっといいぞ。うひひひ……」


「なっ……」


 キララが状況を周囲する。小山田と桜は、とっくにはなれていた。俺にひしっと抱きついているのはキララ一人だけだ。


 キララの顔が真っ赤になった。


「ばかーっ!」

 キララが離れて、はずかしそうに俺の胸を両手でポカポカたたく。




「不正だあああっ!」

 アリーナに野太い声があがった。大河原権三だ。


 大河原が、俺を指さしてくる。「神崎、キサマーっ! 不正行為をおこなったな!」


「あははは!! 俺が不正したって、どこに証拠があるんだよ? 証拠があるってんなら出してみな」


「そもそも、制限時間のペナルティーがありながら、2万以上も魔石を拾えるわけがないんだ! 俺はSランクのダンジョン・ハンターだぞ。90分で学生がどれくらいの魔石を拾えるかくらい、感覚でわかってる。ましてや、おまえたちは30分のペナルティーがあったんだぞ。不可能なことをやったことが、おまえたちが不正をした、完璧な証拠となる」



 キララが心配そうな顔で、俺の耳に顔をよせきた。小声で耳うちする。

「こんな衆目の場で大河原に喧嘩を売るのは悪手よ。大河原は、この演習の責任者よ。学園ではすごい権力持ってるんだから」


「うはははは……!」

 思わず俺は、大笑いした。「キララ、おまえは、俺を見くびりすぎだ。魔石獲得量だろうと、証拠収集能力だろうと、この俺が、高校の一指導員にすぎない大河原なんかに負けるわけがないんだ」

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