第98話

【一人称、主人公視点】


「神崎くんってすごいって聞いてたけど、こんなにすごいとはおもわなかったわ」

「まあ、僕は、最初からわかってたけどね。えへへへ……」

 桜に小山田がちょっと照れたように答えた。どうして、おまえが照れるんだよ。


 でも、はっきり言うと、まだ全然本気じゃない。ベスト装備でもないし、レベルの低い仲間をかばいながらの狩りだからな。俺一人なら、もっと速いペースで狩れるだろう。


 地下第5階層には、それまでの階のように監視カメラやマイクは設置されていないようだ。


 同時に他チームの魔石獲得量を表示するモニターやスピーカーも設置されていない。


 これでは、千代たちの魔石獲得ペースがわからない。

 翔子や碧佳あおかの能力を使えば簡単にわかるけど、それだと不正行為カンニングだからな。


 うーん……、制限時間内に千代たちに追いつけるかな? ちょっと心配になってきたぞ。


 もう少しばかり、狩りのペースをあげるとするかな。


 次の部屋は、大サソリの部屋だった。俺はどんどん狩りをすすめていく。キララも負けじと、二刀流の剣を振りまわす。小山田も攻撃魔法を打ちまくった。


 ダンジョン内のあたらしい部屋の魔物を、つぎつぎに倒しまくって、奥へと進んでいく。


「どこまでいくつもりなのよ!」


「そりゃ、一番奥にある、部屋に決まってるさ」

 キララに俺が答える。



 やがて、俺達は目的の部屋の前までたどり着く。


「ここって、ひょっとしてボス部屋?」

「そのとおり。じゃあ、入るぞ!」

 少し、ためらうそぶりをする小山田を横目に、俺は、ずかずかとボス部屋に入っていく。


「あ、ちょっとぉ……」

 俺に釣られるように小山田たちも、ボス部屋に入ってきた。




 部屋にいた魔物は、これまで戦っていた魔物とは、明らかに違っていた。ひと目で桁違けたちがいに強そうだ。


 部屋に仁王立におうだちしていたのは、超巨大なサイクロプスだった。その強さは見かけだけではない。

 実力においても、この階層にいた他の魔物とは、まったく違うほどに強い相手だ。



「なによ、あれ? おかしいでしょ! どう見ても階層レベルに合ってないじゃないの!」

「ひょっとして、僕たち、ここで全滅しちゃうの?」

「わたし、まだスイーツお腹いっぱい食べる夢を達成してないのにぃ~!」

 部屋にいたボスを見て、身をこわばらせる3人。


「うおおおっ。一発目からレアボス引いたああああっ! 超絶ラッキー!」

 パーティの中で俺だけが、喜びまくってテンションがあがっていた。

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