第79話

「ところで、この僕の加護【魔物ガチャ】だけど、ひとつだけ欠点があったんだ」


「…………」


「だって、有料サービスのガチャって、僕のような普通の高校生にはきついだろ。高校生の小遣いじゃ、ほとんど無料サービス分くらいしかガチャが回せない。バイトしてたなら違うかもしれないけど」


「まあ、そうだな」


「だが、その問題も、僕が菊地組の用心棒をすることで変わった。用心棒代で、ガチャの軍資金は十分ってわけだ。どうだ、すごいだろ!」


 すごいのか、それ?


「いくら、ガチャで魔物がだせるからって、ゴブリン、コボルト、オーク程度じゃ、ぜんぜん俺達にはかなわないぞ」


「ばかにするなっ!! そいつらはN《ノーマル》魔物だ! SSR魔物ならこんな戦闘力じゃないよ!」

 メガネ少年がムキになったように言う。


「SSRで、なにがでるんだ?」

 ゲーマーとして、ちょっと気になってしまう。ゲーム『ファースト・ファイナル』も、かなりたってからガチャが実装されたが、でてくるのは装備や素材で魔物じゃない。こいつのガチャは別物だろう。


「ふんっ。僕がガチャを回すのを見てればわかる! ……N《ノーマル》ゴブリン、……N《ノーマル》青スライム、……SRゴブリン・リーダー」

 ガチャで雑魚モンスターが出てくるたびに、翔子2とピピが次々に倒していく。



 メガネ少年は、さらにガチャを回し続けた。もう200回ちかく回したか。


「N《ノーマル》ゴブリン、……N《ノーマル》コボルト、……SRオーク、……」


「おい、SSRはいつ出るんだよ。おまえ、ガチャ運悪すぎだろ」


「言うなーっ!」

 メガネ少年が、顔を真っ赤にして怒りだした。「ガチャ運が悪いのは、自分でもわかってるんだっ!」


「だったら、どうして怒るんだよ」


「自分でわかってるのはいいけど、人に言われると腹がたつんだっ!」


「…………」


 まあ、俺もガチャ運が悪かったから、人のこと言えないが。


 しばらくして……、

「ふう……」

 ガチャに手応えがあったのか、メガネ少年が満足したようにドヤ顔で笑った。


「どうした? ついに、SSRがでたか?」


「ふふふ……。300連回して、天井に到達したのさ。これでSSR魔物が出せる」


 それ、ドヤ顔するところか?


「見てろよ。すぐに、ガチャで実装されてる最強の魔物を出してやるから!」


「なにがでてくる?」


「ちょっと待て!」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「どうした、でてこないぞ?」


「今、僕だけに見えるステータス・ウインドウ内で、SSRガチャ演出映像を再生中だっ!!」


 それ、とばせないのかよ……。

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