第58話 選抜試験で一位になったのは?
【三人称、大宮司キララの視点】
選抜試験の自分の番が来るまで待っていたキララがふと目をあげる。西ノ
西ノ宮千代の(父母ともに同じ)全兄である。17歳。
総一朗は、選抜試験で千代のパートナーを担当した。
キララ自身も、総一朗がかなり強いのを感じている。
「でも、あの、おバカなペラペラジャージほどじゃないけどね」
キララは言ってから、ちょっと顔をこわばらせた。「それにしても……、あのおバカ、なんで、まだ帰ってこないの? まさか、本当に死んだんじゃないでしょうね。……あー、もう。なんであたし様が、あんな奴の心配をしないといけないのよっ! もう、早く帰ってきなさいよっ!」
キララは、そわそわして落ち着かない気持ちを抑えつけるために、キリキリと爪を噛んだ。
☆☆☆
選抜試験が終了した。
袴田が、受験生たちをみわたす。
「これで、実技試験はすべて終了だ。なお、政府は学内順位を強調し、生徒同士の競争心を高め、切磋琢磨させるつもりのようだ。学内順位上位者には、さまざまな優遇措置がとられると聞いてる。もちろん、学内順位は通学期間中の成績によっても、どんどん入れかわる」
「…………」
「……では、試験結果による順位を発表する」
下から順位と名前がよばれていく。
受験生の中からは、喜びや悔しさが入り交じる声が次々にあがった。
……そして、
「……四位
「……はい」
名前を呼ばれた王子は、むずかしい顔をしている。おそらく、もっと上位をねらっていたのだろう。
「三位 西ノ宮千代」
「わ……、わたしが三位……」
西ノ宮千代は、悔しさのあまり、ガクガクと震えていた。一位とる気まんまんだったのだろう。
「二位 大宮司キララ」
キララの名前が二位ででて、受験生たちが、ささやき合う。
『あの金髪が一位じゃないのか?』
『たしか、ダンジョンの一番奥までいけたのって、あの女だったはずだぞ』
『じゃあ、誰が一位だって言うんだよ?』
「そして、一位……」
受験生たちが、緊張した表情でゴクリと唾をのみこむ。
「神崎直也……」
「えー?!」
「どういうこと?」
「死んだ人間が一位?」
思わぬ名前が一位に呼ばれて、受験生たちがざわついた。
王子誠志が立ちあがった。
「袴田試験官、彼が一位なのはおかしいんじゃないですか? 崖から落ちて死んだはずです」
「少しもおかしくないぞ」
「どういうことですか?」
「ルールは覚えてるな?」
「当然です」
「わたしは言った。『どこまで深くダンジョンに潜れるかを競ってもらう』、と」
「…………」
「そして、ダンジョンの一番深くまで到達したのは、神崎直也という受験生だ。彼が
「なっ……」
王子が、目をみひらいて固まった。
『まあ、たしかに一番深いところまで到達したのは事実か……』
『でも、死んじゃったら、一番になっても意味ないわな』
『戦死したら二階級特進した、みたいな感じ?』
受験生たちが、ささやきあう中、突然、キララのすぐ横で声があがった。
「えーっ?! 納得いかねー。なんで、俺が一位なんだよーっ! ふつう、失格だろー!」
キララがふりむくと、いつの間にか、眼の前に神崎直也がいた。いつものペラペラジャージを着て平然と立っている。
「ちょっと、あんたーっ! 今まで、何してたのよっ! 人にこんなに心配させて……」
「え?」
「ううっ……、うわーん……」
「どうして、おまえが泣くんだよ」
「おバカーッ! ぐしゅっ……」
キララは、涙で顔をぐしゃぐしゃにして、直也の胸をポカポカとたたいた。
「神崎くん、君……、生きてたのか?!」
袴田が、
「あ、はい……。なんか生きてたっぽいです」
「どうやって、ここまで戻ってきたんだ?」
「いや……、まあなんというか……、気づいたらダンジョンの出入り口付近にいた、みたいな? とりあえず、そんな感じで……。えーと、アハハハハ……」
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