第35話 主人公が無双した

>なに、いまの?

>グリフォンをワンパンしたぞ

>ワ◯パンマンw

>いろいろ、おかしいだろ

>あんなすごいの見たことないぞ

>規格外すぎて草

>後からついていった女の子、なんなの?


>おい、あの少年と女の子、そのままボス部屋に入っていったぞ

>第7階層ボスって、まだ攻略されてないんだろ?

>政府・最先端の調査部隊パーティは、攻略済みという噂。でも、民間の最高クラスのハンターが30人以上いても、まだ戦力たりないっていわれたはず


>あれ? ボス部屋の扉、開いた?

>開くの早すぎだろ。あの少年、ボスに瞬殺しゅんさつされた?

>ボスを倒して、下の階層に降りた可能性もあるぞ

>ありえないだろ


「死んだんだろな。バカが……。無茶するから……」

 ガバルが、いつものように他人を見下みくだす目つきで、面白そうにニヤリと笑った。「今から、ボス部屋に近づいて、中をのぞいてみるぞ。そうすれば、あいつらがボスを倒したか、倒されたかがわかる。階層ボスは、一度、倒されたら、再びくまでに時間かかるからな」

 ガバル・チャンネルのドローン・カメラが、ボス部屋に近づく。開いた扉から階層ボスの部屋の中が映しだされた。

「ほら、ボスがいるだろ……って、ボスがいないだと?!」

 ガバルの顔が真っ青になった。


>どうなってんの?

>あの少年が、ソロで階層ボス倒したぞ

>オッパイ大きな子もいたけどね

>ふたりじゃ無理だろ

>この階層、民間の最先端だよね

>すごすぎ

>異次元の強さ

>おれたちはまぼろしをみせられてるのか?

>ヤベー!


 ガバル当人は、カメラの前でポカーンとなっていた。間の抜けた顔が、カメラに映しだされ、リアルタイムで世界中に配信されつづける。


>ガバル、ダサくて草

>ガバル信者おわったああああ


「ぐぬぬ……」

 ガバルが、くやしそうに唇をかみしめる。

 それまで、他人の批判なんか蛙の面にションベンという態度だったガバルも、さすがに、今回、眼の前で起こったことは効いたようだった。


>ガバル、ざっこw

>ガバル、レベルいくつだっけ?

>たしか、16

>レベル、ひとつあげるのに時間かかりすぎ


「おまえらみたいな素人にはわからないだろうが、レベル16ともなると、経験値をかせいで、レベルをひとつあげるのにも何ヶ月もかかってくるんだぞ。大変たいへんなんだぞ」

 必死にガバルが言いかえす。


 ガバルの声には余裕よゆうがなかったが、レベル16くらいになると、それ以上にあげるのが大変たいへんなのは事実だった、…………はずだった。


   ☆☆☆


【三人称 花凛はなり視点】


「いますごい魔物を瞬殺したみたいなんだけど? かなり大きくなかった……? そういえば、今朝、テレビのニュースで見たような。グリフォン……っていうの? すっごく強いらしいけど……」

 花凛がつぶやく。


「え? ああ……、さっきのグリフォン? あいつ、見た目だけの雑魚だから。花凛もレベリングすれば、すぐにデコピン一発で倒せるようになる」

 直也が言う。


「そんなの、わたしが、できるてるとこ想像つかないんだけどぉっ!」


「大丈夫。大丈夫。さらにパワーレベリングすれば、花凛も、そのうち、フッと息を一息ひといき吹きかけるだけで、グリフォンなんて体ごと四散するようになるから」


「それ、わたしがとんでもないバケモノになってない???」


「花凛は昔から大げさすぎなんだよ。ただのモブ魔物だ」


「そうかな、そうかな???」

 花凛は、信じられないといったように、クビをかしげながら早口になった。


「おっ。『ミスリル・スライム』でた。本来、地下第100階層以下のモンスターなんだが、極稀ごくまれに、この階層でもでるんだよなあ……。攻撃力は大したことないが、経験値が大量にもらえるんだ。普通に戦えば、すぐに逃げられるが、今の俺なら一撃だ!」


 花凛の眼の前で、直也が簡単に『ミスリル・スライム』を倒した。


 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

 《レベルが上がりました》

…………

……


「あーん……。いくつレベルあがってるのーっ?! もう、わけがわかんないんだよーっ」

 花凛は、とまどいながら、直也についていくしかなかった。


「低レベルなら、少ない経験値で、レベルが簡単にあがるのはあたりまえだろ。まだ、本格的なレベリング前だぞ」


「えっ! 今までのはレベリングじゃなかったの? なんか、すごくレベルがあがった気がするんだけど……」


「なにを言ってるんだ。今は、狩り場まで移動してるだけだ。まだ本番のレベリングは、はじまってない」


「えーーーーーっ?!」

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