第33話

「なにこれ? なに、これーっ?!」

 花凛はなりは、まだアイテムボックスに驚いている。


 花凛は、俺の眼の前で、何度も剣の出し入れをりかえした。

なおくん、超すごい! すごすぎるよぉー。ありえないよ、こんなの! 誰にも真似できないよ。なおくんすごすぎーっ!」


「いや、さすがに驚きすぎだろ」


「そんなことないよーっ。絶対、超スゴイよぉー。この能力利用したら、なんか、すごいお金儲かねもうけとか、できそうな気がする」


「無理だろ」

 まあ、ダンジョンの狩りには役に立つし、狩りではもうかるが。


「そんなことないと思うよ!」


「それに、この能力は大っぴらに公開したくないし」


 そう言うと、さすがに花凛も声をひそめた。

「……バレると、政府の研究機関とかに呼び出されて、実験台とかにされるかもだよね」


「そうなるかは、わからないが、ともかく面倒くさそうなことは起きるだろう。今、俺の、この能力の秘密を知ってるのは、俺以外には花凛だけだ。いいな、二人だけの秘密だぞ」


「二人だけの秘密……。わ、わかったよ」

 なぜか花凛は、再び顔を赤くした。


「でも、やっぱりいくら考えても、このアイテムボックスって、ものすごい能力だと思うよっ!」


「ゲームだと、こんなのあたりまえの機能だぞ」


「ここ、ゲームじゃないから! 現実世界だからっ!」


「でも、『ゲーム内世界こそが現実!』、みたいなこと言ってる奴いるだろ。はっきり覚えてないけど、『ゲームこそが人生!』みたいな感じの名言もあったような……」

 ヘビーゲーマーの俺にとっては、なんとなく共感できる発言だ。


「それ、ごく一部の特殊な人だけだからっ! ゲームは現実じゃないからーっ!」



 花凛は、アイテムボックスの機能がよっぽど気に入ったらしい。とりあえず、花凛もアイテムボックスがつかえるように、ずっとパーティを組んでる状態にしておく。




 学校から帰ろうとすると、花凛が手ぶらだった。

「えへへ……、通学用カバンをアイテムボックスの中にいれちゃった。超便利。これでお買い物とかでいっぱい買っても、どうやって持って帰るか心配しなくていいよね!」


「いいけど、バレないようにしてくれよ」


「うんっ。もちろんだよ」


「あと、花凛のレベリングもする」


「……わたしもダンジョン行くの?」


「うん」


「でも危険なんでしょ?」


「俺がずっと一緒についてるから大丈夫だ」


「え? なおくんと、ずっと一緒?」


「うん。どうしても嫌っていうなら仕方ないが……」


「仕方なくない。なおくんと一緒にダンジョン行くーっ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る