第31話
「神崎、おまえは、簡単には殺さねえ。徹底的に追いつめて、死ぬほどの恐怖を味わせながら殺してやる」
菊池が、殺意をこめた目で、直也を
両親がヤクザなだけあって、菊池の
「そういってイキってたくせに、結局、最後に立場が入れかわるんだ。自分が相手に言ってたように追い詰められて、死んだ奴等を、俺は何人か見てきたよ。因果応報ってやつだな」
「横田と上川のことか?」
「さあな……」
直也がとぼける。
「まあいい……。次にダンジョンで会うのが楽しみだ。ダンジョンでは、いくら人殺しをしても目撃者が生き残らなきゃ、事故ってことですむんだからな。いい世の中になったもんだぜ」
「おまえのような知能の低い人間の一番の欠点は、自分が追い込まれる立場になったときのことが想像できないことだ。だから、他人にいくらでも残虐なことができるんだよ……」
「口の減らない野郎だ」
菊池が、イラッとした表情で、額をこわばらせる。
「……それはともかく、朝から学校の校庭で爆音をあげて、バイクでパラリラパラリラは、やりすぎだ。うるさいよ。あいつらを静かにしてくれ」
直也が菊池を見つめた。直也の圧力に菊池が、少し
「まあいい……」
菊池は振り返り、学校の運動場でバイクに乗って暴走していた子分たちに言った。「おまえら、もういい。大人しくしてろ。今後、学校内でバイクを乗り回すのは禁止だ」
菊池のヤンキーへの言葉は、圧倒的だった。
「「「はっ、はいっ! わかりました菊池くんっ!」」」
バイクを乗り回していたヤンキーたちは、まるで大企業に就職したての新入社員が社長の前にでたような態度だった。運動場で響き続けていた騒音が嘘のように、たちまち消えさった。
菊池は、立ち去る前に捨て
「神崎、おまえがいくら強くたって組織の力にはかなわねえ。おまえの命は、次にダンジョンで会うまでだ」
☆☆☆
校庭での、直也と菊池のやりとりは、すでに学校に登校していたみんなが、じっと見守っていた。
直也と菊池が分かれた後の教室は、その話題でもちきりだ。生徒たちが口々に
「見たか? 神崎が菊池に言って ヤンキーたちが運動場でバイクで暴走するのをやめさせたぞ」
「神崎、スゲー!」
「神崎って、なにもんなんだよ?」
「菊池でも、神崎に逆らえないってこと?」
「そんなわけないだろ。菊池は、暴力のプロだぞ。人前では暴力をふるわないってだけだ。法律が
「でも、みんな見てる前で荻原がコケにされただろ?」
「荻原は、高校デビュー組だよ。菊池の傘下に入ってからモヒカン頭にして、急に
「荻原は、菊池グループの幹部だぞ。荻原を、みんなが見てる前でコケにされたら、菊池としても黙ってられないだろ」
「幹部の荻原がやられて、菊池は完全にメンツを
「ヤクザの世界は、メンツがめちゃくちゃ重要だからな。ヤクザは、
「菊池は、この学校の帝王だからな。誰もさからえない」
「でも、神崎も、めっちゃ強そうだよなあ……」
「神崎が本気をだせば、菊池でもボコボコにできそう」
「それより、神崎って、なんか最近、急に背が伸びたような……。魔法かなにかなの?」
「いや、高校生の男子なら、一年で10cm伸びる奴とか、普通にあるだろ」
「神崎って、学校ではおとなしいけど、本気で暴れたら、めちゃくちゃ強いかもね」
「相撲部の岸川に、腕力で勝つってヤバイだろ」
「『相撲』の加護をもらった岸川が、ベンチプレスで350kgあげてたの見たことある」
「巨体デブのパワーってヤバイからな」
「なんで、岸川に神崎がパワーで勝てるんだよ? 神崎の加護、なんとかいう糞ゲーだろ?」
「ダンジョンにこもって、ずっとレベリングしてるらしい。元から帰宅部で、ヘビーゲーマーだそうだよ。そういうの、毎日、何時間もやり続けても苦痛にならないんだろ」
「でも、菊池は本物の悪党だぞ。その辺にいるような雑魚ヤンキーとはスケールが違う」
「菊池は、そのうち神崎を殺すよ。なにせバックが本職のヤクザだから」
「菊池には組織力があるからな。なんでも、何人もの人間を殺して、警察に追われてる『悪魔の殺人鬼』ってのを
「でも、神崎もかなりヤバイぞ。神崎なら菊池を倒して生き残るかも……」
「神崎ってイケメンよね」
「入学時は、イケメンって感じじゃなかったよ。ダサい感じだった。でも、最近は、モデルみたいに超カッコイイ」
「毎日、早瀬
「いっしょに登校してくるのは、魔物が町にも出るようになってからでしょ」
「以前は、別々に登校してたよね」
「今は、登校中に魔物に襲われる可能性があって、集団登校が
「それより、早瀬のオッパイおおきい!」
「美少女だよなあ……。いったい、どんな男なら、あんな美少女とつき合えるんだろう?」
「俺は、織田
「2人ともオッパイおおきいよな」
「オッパイ! オッパイ!」
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