第26話 バトルロイヤル・デスゲーム

 ゴブリン単体は、そこまで強くない。しかし、き出たゴブリンは、棍棒ではなく剣を装備していた。


 冷静に戦えば、一対一でも勝てない相手ではなかった。しかし、ヤンキーたちの多くは、命のやりとりをするような実戦に慣れてないようだ。


 多くのヤンキーはゴブリンを倒せたものの、不意をつかれた20人ちかくのヤンキーが、ゴブリンに殺されてしまう。


「普段イキってるわりには弱すぎだな」

 直也が、肩をすくめる。「いくら刃物を持ってるからって、ゴブリンにられるとはな。集団でおどすのは得意でも、一対一の戦いになると、しょせん、この程度か」


 直也が続ける。

「さあ、次にくのは長剣を装備したコボルトだぞ。今、なんとか勝てた奴も、多くがゴブリン相手にかなり苦戦してたからな。コボルトに勝てる奴は、ほとんどいないだろうなあ……」


 直也は、生き残ったヤンキーたちの方へと視線を移した。「おまえら、はやく殺し合わないと、次、魔物がいたら、確実に死ぬぞ」


「で、でも…… この部屋は、最終的に一人しか生き残ることができないんだろ?」

「そうだ。殺し合ったところで、結局、魔王のように強いおまえ以外、誰も生きのびることができない……」

 ヤンキーたちが気弱そうに言った。


「ふふふ……」

 直也が微笑む。その表情は、悪魔のようだ。口から出た言葉は、まさに悪魔のささやきだった。「20分間生きのびたら、複数の人間が生き残ってていたとしても部屋の扉が開くようになってる」


「なんだって?!」

 完全に絶望におちいってたヤンキーの表情に、少しだけ生気が戻る。


 直也は続けた。

「魔物がくのは3分ごとだ。3分間ごとに、最低一人を対人戦で殺さないと、次には、コボルトに襲われる。その次はオークだ。さらに、その次は、オーガ……。オーガともなると、おまえらじゃ、100パーセント勝てないだろうな。確実に死ぬぞ。あははは……」


「くそっ……」

 ヤンキーたちが、顔をこわばらせる。



 それから数秒とたたず……、


「ぎゃああああっ!」

 突然、ヤンキーの一人が悲鳴をあげた。すぐ近くにいたパンチパーマが、不意に背中から斬ったのだ。


「ち、ちくしょーっ。ひどい……。仲間だろ!」

 斬られたヤンキーが振り向いてうめく。


「おまえなんか仲間じゃねえ。たまたま、今日、一緒にいただけの他人だ」

 パンチパーマが、さらに剣を振り上げて、息の根を止めにかかろうとする。


「くそーっ」

 斬られたヤンキーも、持っていた剣をパンチパーマに向ける。が、身体を深く切られたので、力がでない。


「うぎゃっ!」

 すぐに、パンチパーマの剣で息の根を止められてしまった。


「ひいいいっ!」

「ぎゃああっ!」

 すぐに、部屋のあちこちから、悲鳴があがりはじめた。


 生き残ったヤンキーの中でも、弱い者から優先的に、仲間に殺されていく。


 直也が微笑む。

「いいじゃないか。その調子だ。汚物同士で、どんどん殺しあえ。社会に迷惑をかけてばかりのおまえらも、たまにはボランティアで、汚物の清掃くらいはしないとな」


「おまえなんかにだまされるかっ!」

 直也に視線を向けられた、ヤンキーの中のひとり、金髪の男が言いかえした。「俺と、上川っちとは、幼稚園の頃からのつきあいだ。小さい頃から遊びにいくのも一緒。悪さするのも、ずっと一緒だった。俺達の強いきずなは、おまえなんかに破れるもんじゃない……、うぎゃあっ!」


 見れば、金髪のヤンキーを背後から上川が斬りつけていた。


「上川っち。どうしたんだよぅ……。俺達、トモダチだっただろ……」


「うるせえ。おまえが勝手にそう思ってただけだ。俺と、おまえはトモダチなんかじゃない。おまえは、ただのパシリだったじゃないか」


「そんな……、ひどいよう」


「死ね!」


「ぎゃあっ!」

 上川が、金髪にとどめをさした。


「あはははっ。いいぞーっ! おまえらの友情なんて、しょせん、その程度」

 直也の爆笑が部屋じゅうに響きわたる。「その調子だ。さあ、もっと殺しあえ!」


 ヤンキーたちは、周囲の誰もが信じられなくなっていく。とどまらない疑心暗鬼が、ヤンキーたちの心をむしばむ。

 

 死と隣合となりあわせの、極限状態においこまれたヤンキーたち。おいつめられた顔は、血の気が失せ、こわばっていた。


 その中で、直也、一人だけが、おかしくてたまらないように笑い続けていた。「ぎゃはははは……。さあ、はやくしないと、次の3分がくるぞ。もっと仲間を殺さないと、今度はコボルトに殺されるぞおー!」

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