第24話 主人公が無双する

【三人称 ヤンキーたちの視点】


「おまえ、ここがどこだかまだわかってないようだな。いつ殺されても文句の言えないダンジョンの中なんだぞ!」

 ヤンキーの一人が、前に進みでて言った。


「あはははっ」

 直也は、おもむろに剣を抜きながら、まだ笑っている。「しかたないなあ……」


 直也は、やれやれといった表情で肩をすくめた。「おまえら全員、一般人をPKした時点で、死刑確定だ。今から、超絶上級者の『初心者狩り』ってものを見せてやるよ。見物料は、おまえらの命ってことで」


 直也の態度に、ヤンキーたちの群れから笑いがおこった。

「こいつ、これだけの人間に囲まれてるのに、なんで笑顔なんだ?」

「頭がおかしい」

「薬でも決めてんのか? とんだジャンキー野郎だぜ」

「やっちまえ!」

 ヤンキーの集団が、いっせいに直也におそいかかった。


「ゴブリンがまとめて100匹でかかってきて、この俺をPKできると思ってんのか!」

 直也が叫ぶとともに、ヤンキーたちの眼の前で、奇妙なことが起こった。直也に飛びかかったヤンキーたちの身体が、次の瞬間、肉片に変わるのである。


 なにが起こっているのか、まったく理解不能だった。直也が剣を振るっているのは、ようやくわかる。しかし、その剣先は、まるで蜃気楼しんきろうのようだ。素人のヤンキーたちには、おぼろげにらめいて見えるだけで、直也の剣の動きを、眼で追うことができない。


 見る見るうちに、ヤンキーたちの身体が、ミンチになって、周囲に血と肉の破片となってき散らされる。


「ぎゃーっ」

「ぐわあああっ」

「ぐふあぁああ」

 あっという間に十数人のヤンキーが肉片に変わっていく。


 ヤンキーたちが、悲鳴のような叫びをあげはじめた。

「なんだ、あれは?!」

「強い。強すぎる。バケモノだあああーっ」

「強さがおかしい。人間の強さじゃねえ」

「剣先の動きが見えねえ……」

「なんで、ダンジョンの地下第3階層に、ラスボスがいるんだよ!!」

「魔王だあ! こんなところに、魔王を連れ込んだのは誰だあああっ!」


 周囲のヤンキーたちが叫ぶ間にも、直也に近づいたヤンキーたちが、一方的に肉片に変わっていく。


 それは、戦いではなかった。業務用のミンチ機に、肉を投げ入れるようなものだ。直也に近づくと、ヤンキーたちの身体は、あっという間にミンチに変わる。血しぶきとともに、周囲に、ばっと撒き散らされるのだ。


 みるみる間に、30人ほどが斬り殺されたところで、生き残ったヤンキーたちが、直也の強さを目の当たりにして後退した。


 直也はそんなヤンキーたちを見て言った。

「さあ、上川、それにパンチパーマ……、大量ごみを処理する時間だぜ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る