第5話

 俺の身体はボロボロになっていたが、幸い倒したコボルトの一匹が回復ポーション(弱)をドロップした。ポーションを飲むと、はげしく痛みつづけていた全身が嘘のように治っていた。なぜかはからないが、ボロボロになっていた服まで治っている。


 ゲームのスキルが使えるとか、回復ポーションで服まで治るとか、おかしいことだらけだ。わけがわからない。


 とりあず、今日はこれで帰ることにする。


 時間が遅くなってきて、浅い階層にパーティが増えてきたためか、帰りに魔物に出くわすことはなかった。もちろん、ゲーム『ファースト・ファイナル』をやり込んだ俺が、帰りの道を間違えることはない。


 ☆☆☆


 自宅までたどりつく。玄関の扉を開け、靴を脱ぐ。しばらくすると、隣の家から人が走り寄ってくる気配。


 間を置かずに、花凛はなりが現れた。


なおくーんっ! 心配したよぉーっ!」

 泣きながら、花凛が抱きついてくる。


 花凛が強く抱きついてくるので、オッパイがぐりぐりと俺の胸にあたる。まさか、また成長した? 服の上から見てるだけじゃわからないが、花凛のオッパイは、今も着実な成長を続けているようだ。ただでさえ大きいのに……。


 花凛は泣きつづけていた。俺がびっくりするほどだ。

「横田たちに連れていかれて、本当に、心配したんだからね! ダンジョンなんかに連れて行かれて、死んじゃうかと思ったよぉーっ!」


 まあ、少し間違えば死んでいたのは事実だ。


 だが、俺は生きているし、必要以上に花凛を心配させる必要もない。


「大丈夫だよ。花凛は、いつも心配しすぎなんだよ」

 俺は花凛の頭を、やさしく撫でてやる。


「うう……っ」

「ほら、泣きやめ」


 花凛の柔らかい身体。超いい匂い。そんなにぎゅっとされたら、むらむらしてきてしまう。


 ヤバイ……。この状態が続けば、我慢しきれず、押し倒してしまいそうだ。


 俺も健康な高校生。我慢するのも大変なんですからね、花凛さん。どうか、その、わがままボディーを離してくださいな。



「ああ……。とりあえず、腹減った」

 俺が言うと、やっと花凛が離れてくれた。


「どうせ、晩ごはん用意してないんでしょ」


「あ……、そう言えば忘れてたな」


「今晩は、わたしの家に来て食べていけばいいよ」


「そう? また、おばさん、今日も夜勤?」


「うん」


 花凛の母親の咲子さんは看護師で、夜勤も多い。


 花凛の家は、花凛を長女とする三人姉妹だ。父親は、海外長期出張中。


 ちなみに俺の両親も、海外で事業をはじめて、長期間、家を留守にしていた。


 花凛の母親の咲子さんから、未成年の少女三人だけじゃ、怖がるから俺も一緒に泊まっていって、といつも言われている。もちろん、寝室は別だぞ。


 俺は、携帯ゲーム機を手にし、自分の家に鍵をかけて、隣の花凛の家にいく。


 玄関で靴を脱いであがると、

直兄なおにい」「あにーっ!」


 2人の少女が駆けよってきて、俺に抱きついてくる。


 花凛の妹、篠凛しのりと、鈴凛すずりだ。


 篠凛は、小学5年生。鈴凛は、小学2年生で、すでに、なかなかの美形だ。将来は、そうとうな美少女に育つに違いない。


「いい子にしてたか?」


「当然っ!」「鈴凛、いい子ぉーっ!」


「ほらほら、もう2人は寝る時間でしょ」


 気づくと、10時を過ぎていた。たしかに、小学生はもう寝る時間だ。


「わたし、直兄なおにいと遊ぶー」「鈴凛も、あにと遊ぶーっ」


「だめ。明日おきれなくなるよ」


「あー、そんなこと言って、わたしたちが寝てから、お姉ちゃん、直兄なおにいとエッチなことするんでしょ」「エッチなことするーっ。エッチぃーっ!」


「そ、そんなことするわけ無いでしょ。ご飯食べて、お風呂はいって寝るだけだよ」


「大きい姉ちゃん、あにと一緒に寝るの? 鈴凛も一緒に寝るーっ!」


「寝ないからーっ! 一緒に寝ないからーっ!」

 花凛が顔を真赤にして叫んだ。


「料理あたためてるところだから、ちょっとまってね。その間に2人を寝かしつけてくるから」


「うん」

 言ってから、俺は携帯ゲーム機のスイッチを入れた。すぐ近くのお隣さんなので、花凛の家の中でも、俺の家のWi-Fiが使える。


 花凛が出してくれたのは、にくじゃがとご飯だった。花凛がもらった加護は【家事】だ。そのせいか、元からうまかった料理の味が、さらに上手くなっていた。まさに、絶品だ。


 それから、風呂に入ってから布団に入った。もちろん花凛とは別々の寝室だぞ。



 布団の中で携帯ゲームをいじりながら、考える。


 菊池や横田たちの横暴は、近いうちに止めなければならない。そうしないと、あいつらはますます調子に乗って、さらに酷いことをやりだすだろう。


 俺がレベルをあげる必要がある。【加護】での経験値ブーストと、超絶なゲームスキルを持つ俺なら、あいつら3人を圧倒できるようになるのは、そんなに難しくないはずだ。


 明日は土曜日だ。学校は休み。


 俺のゲーム知識と超絶テクニックで、これから、俺TUEEEの無双が始まるぜ。


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