第2話 オッパイの語源の通説を笑え!

「では、通説その2だ。『おなかいっぱい』の『いっぱい(一杯)』が訛って変わったという説だ。日本国語大辞典 第二版 編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編『日本国語大辞典 第二版』 第二巻、小学館、2001年2月20日、1231頁にはそうでているそうだ」


「ほほう。これはまともなんとちゃうか?」


「でもなあ、『いっ』にパ行の助数詞が続く言葉が他に『おっ』にかわったのがあればともかく、一発、一匹、一筆、一風、一服、一分、一遍、一方、一本と言った言葉で『いっ』が『おっ』に変わってできた言葉は思いつかない」


「でも赤ん坊が『お腹いっぱい』まで飲むから『オッパイ』というのやったら、なんとなく説得力あるよな気ぃするんやけどなあ」


「見解の相違だな。まぁ後でオレの発見した本命の語源を聞いたらもっと納得すると思うぞ。じゃあ次、通説その3。中国春秋戦国時代の学者王牌おうぱいが転じたとする説だ」


「ちょっと待てや! それ漢字の読み方が間違うとる。王牌おうぱいやのうて王牌ワンパイや、マージャンで山やけどツモったらアカン十四枚の牌のことやんけ!」


「オレもそう思う」


「だいたい、春秋戦国時代の王牌おうぱいって誰やねん! 何した人やねん! なんで古代中国の学者の名前から『オッパイ』の名前つけなアカンねん! ボクも中国の歴史好きやけど、聞いたことないわ!」


「オレも聞いたことがないな。検索しても、そんな歴史上の人物は出てこなかった」


「ふざけた話やなあ。例のWikipediaではコレの出典、どないなっとんねん?」


「 “あの美しくやさしい膨らみを「おっぱい」と名付けたのは誰か”. NEWSポストセブン (2017年12月2日). だとさ。この記事、現在もネット上で閲覧できるぞ」


「アカン〜! そんなん根拠にしたらアカンって!」


「ちなみにこの記事より古い記事を見つけたぞ。 2010年4月27日 19:10 の日時で福岡市の『まごころ保育園のみんなでつくる子育て辞典』の『おっぱい』の項で語源の説3としてやはり王牌説が紹介されていた」


「ええ、ホンマか?」


「ところがこれもネット上の『語源由来辞典』からの引用だった。その『語源由来辞典』には今も王牌説が掲載されている」


「ええ! こんな怪し過ぎる説明を紹介してホンマにええんか『語源由来辞典』?」


「もっとも『おっぱいとの関連性が薄いため、音から考えられた俗説であろう』と批判的だけどな。ところが、世の中には暇な人もいて、この王牌説の源を探り当てた人がいた」


「ホンマかいな!」


「これはオレも直接確かめたわけじゃないんだが。なんと民明書房刊『世界乳房博覧』だったそうだ(爆笑)😂」


「マジか〜(大爆笑)🤣」


「ネットに残ってた説明を引用するぞ。『乳子の存在をはじめて提唱した中国の春秋時代の学者、王牌(おうぱい)の名が、こんにちの「おっぱい」の語源となっていることはもはや常識となっている。民明書房刊「世界乳房博覧」』だそうだ(爆笑)😂」


「常識でもないし、民明書房の名前が出ただけでもうおしまいやん(大爆笑)🤣」


「その通りだ。民明書房とは、宮下あきらのマンガ『魁!!男塾』などに登場する架空の武術のデタラメな説明の箔付けに使われる架空の出版社だからな(爆笑)😂」


「ゴルフのルーツが中国の呉竜府ご・りゅうふやで! ひ〜、腹痛ぁ〜(大爆笑)🤣」


「出典を『民明書房』としている時点でネタ以外の何者でもない!」


「『Wikipedia』も『語源由来辞典』も結局『民明書房』か〜。情報源が『民明書房』は記事の信用度はゼロやで! マジな記事にこんなん載せたらアカン!」


「だよなあ。じゃあ次はいよいよオレの本命、外来語説だ!」




つづく

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