「近未来アイドル」
朝、目が覚めた。
コウイチは寝起きが良い。特段布団と仲良くすることもなく、むくりと起き上がり洗面所へ身だしなみを整えに向かう。すると、どうやら先客だ。
「おお、コウイチ。俺もさあ、最近髪とかもっと立ててみようかなって思ってよ。鏡の前独占してたらさっきアキラにも怒られたんだけど。ははは」
ルームシェアメイトのヨウスケは笑いながら、鏡越しにコウイチに話しかけてきた。視線はそのままで、横に一歩ずれる。スペースを譲ったつもりのようだがまだ狭い。コウイチは苦笑しながらとっとと洗顔と歯磨きを終えてしまおうと緩やかに決めた。
「じゃあ、ヨウスケ。出発の時間には、ちゃんと髪のセット終わらせておくんだぞ。俺は居間で待ってるからな」
「はいはいはい、わかってるよー」
何に対しても準備に時間のかかるヨウスケのいつもの返事にあきれつつ、居間に足を運ぶとアキラの姿。
「おはようコウイチ。君はヨウスケと違っていつも早起きで用意も早い。感心だな」
「君にはかなわないさ。いつもきっちりしてるよ、ほんと」
アキラとこうしてコウイチが何気ない会話をするのもいつものこと。「出発の時間」までは、こうして居間でのんびり過ごすのがルールだ。
そして、起床してから、アキラと話しているこの現在までずっと、家のそとから黄色い歓声が聞こえてくるのもいつものこと。家の壁がガラス張りなのもいつものこと。
もう慣れた。
なんてったって、近未来のアイドルなんだ。俺たちは。
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