第5話 美少女JKモデル、ガチで美女を救う①
翌日の朝。
再び学校に戻ってきたウチは、正門前で不機嫌に周りを見渡した。
やっぱ、建物や環境は、ウチの記憶とそっくり同じ。
ウチが着てる制服も一緒。
違うのは、人間どもの体脂肪率が軒並み30パーを超えてるとこだけだ……
ウチは眉を顰める。
「……マジ意味わかんない。さすがのりりあちゃんも悩むわ」
昨日、気絶から目を覚ましたとき、ちょうどママが保健室に迎えにきたとこだった。
でも、そのママさえも、見た目が全然変わってた。
名前は一緒だし、送られた家も確かに我が家だったけど、母親だけが、ウチの知ってる存在じゃない……
マジ落ち着かない……
「アナタ、そろそろ正門閉めるわよ……?」
太って首のない女教師が、一向に動かないウチに困惑してる。
ウチは肩をすくめて、しゃーなし校内に入った。
廊下は当然肉厚なヤツらばっかで埋まってた。
普通三人横に並んで余裕のある広さが二人で目一杯になってて、めちゃくちゃ通りにくい。
なんとか潜り抜けてりりあのクラスのドアを開ける。
すると、予想通り、昨日と同じデブだらけの光景が広がってた。
……もう、疑いようがない。
ウチはどうやら、あのクソ女神におかしな世界に飛ばされちゃったらしい。
マジ最悪なんだけど。
つかなんなん……?
りりあ、あの女神に恨み買うことしたっけ……?
不満たらたらで教室に入る。
すると、途端にクラスが静まり返った。
顔を上げると、全員がウチをガン見してる。
ウチの美しさに見惚れてんのかと思ったら、なかには、ウチに向かってクスクス笑ってるヤツもいた。
カチーン。
「あ……? んだよ……」
ブスがカースト最上位のりりあちゃんを笑うなんて、随分度胸あんじゃん。
ウチは、そいつらに喧嘩を売るように睨む。
これだけでカースト下位の女はすぐに目を逸らして黙る……はずだった。
が、そのブスたちから返ってきたのは、ウチを小バカにしたような冷たい笑いだった。
な、なんだよコイツら……
戸惑うウチの頭上で、ホームルーム開始のチャイムが鳴り、昨日の担任を名乗るオッサンが入ってきた。
ウチは仕方なく自分の席につく。
それでも、違和感は消えなかった。
◇
その日1日は、休み時間のたびに学内を歩いてみた。
わかってきたことがある。
結局、学校にいる奴らはほぼ全員、太ってるらしいのだ。
髪を染めてチャラついた人間も、根暗そうに俯いた人間も、背の高いのも低いのも、どいつもこいつも大きな腹をゆすっている。
教師も、他の学年のヤツらも、痩せ型なんて殆どいない。
デブ学園だ。デブの楽園。
なんだよこの世界……
女神に殺意が湧いてくる。
飛ばすならもっとイケメンしかいない世界とかにしろし……
昼休みには我慢の限界で、ウチは鞄を持って外に出ることにした。
二度と来るかこんなとこ。もう中卒でいいわ。
校舎から出たら、外の世界は明るかった。
悠々と太陽の下を歩く。
辞めると決めたら、気分が良くなった。
気分が良くなったら、腹が減ってきた。
よし、今日はカロリーとか気にせず好きなもん食べてやるし。
そう決意しながら中庭を通り、体育倉庫の前を通り過ぎる。
そのとき、ウチの耳が微かな笑い声を捉えた。
馴染みのある、嘲った調子だ。
聞き耳を立てる。
「お〜い、早く謝れよブス」
それは、倉庫裏から聞こえてきてるようだった。
「おぉ? ついにデブがいじめられてんのか?」
ウチは思わず道を逸れて、倉庫裏に顔を出した。
そこでは、女生徒数人が円を作ってなにかを見下ろしてた。
それ自体は、ちょ〜見覚えというか、身に覚えのある光景。
ただ、円になっている人間たちが揃いも揃ってデブなことだけが予想外だった。
つか、今まで見た人間の中でもトップクラスに肥満体型。
しかも最悪なことに、全員シャツを胸元まで開けまくって、スカートはケツまで短くしてる。
げー。グロすぎ。
もはや汚物なんだけど。
吐きそうになりながら、その集団を観察してると、そんなバケモノの輪の真ん中で、誰かがうずくまってるのに気づいた。
肉壁の隙間から被害者の女がチラッと見える。
瞬間、ウチは自分の目を疑った。
――彼女は、とんでもないレベルの、ド美人だったのだ。
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