第1章 美少女→ドブス ドブス→美少女

第2話 美少女JKモデル、ガチで転生する①


 気づくと、世界が一面黄色かった。


 んだここ……ひまわり畑?


 ボヤけた景色に目を凝らすと、次第に思った通りのひまわり畑が見えてくる。

 同時に、体が空中に浮いてるような感覚を覚える。


 ……え、なにこのフワフワ感。

 ウチ、マジで死んだの……?


 いやいやいや、勘弁なんだけど!

 超絶美少女の人生が、バニラで終わっていいわけなくね⁉︎


 焦るウチの頬を、ふと生温い風が掠めてく。

 真横に気配を感じて振り向くと、


「お、起きた? 大丈夫そ?」


 ……ウチがいた。

 いや、意味わからんと思うけど、それはマジでウチだった。

 ただ、背中に羽が生えて、白い服着て、なんか光ってた。光ってるウチだった。


「ちょり〜っす☆」


 光ってるウチがウチに挨拶した。


「はっ……え、なんで……」

「やばたにえん?」

「え、なにがやばたにえん……?」

「さぁ?」


 光ってるウチが首を傾げる。本物のウチは混乱する。


「いや、ていうかなにアンタ。ウチじゃん。怖ぇんだけど。ウチの見た目パクんないでくれる?」

「違ぇしw ウチは女神様。パクってんのは実質お前」

「は、お前頭逝っちゃってんの……?」

「逝っちゃったのはお前だよ」


 女神のウチは軽いテンションでウチを指差す。

 んだコイツ。腹たつな。でもガチでかわいいから許せる。


 女は、そのまま容赦なくウチに話しまくってきた。


「お前今さっきガチでバニラに轢かれて死んだじゃん? アレさ〜、ぶっちゃけこっち側のミスなんよね。マジごめんって感じ」

「は……?」

「いやでもお前も同罪だよ? だってお前、ウチのお守り踏んだっしょ? あれでコッチの指先狂ったっつーか、『は? いやこいつダル……』みたいな感じで、つい殺っちゃったんよね〜。まぁ、反省してっから許せし」

「いやいや、許せんし。なにしてくれちゃってんの?」


 ウチはマジでビックリして女神にキレ散らかした。


「ついやっちゃったで殺してんじゃねぇよ! りりあの人生これから輝く予定だったんだぞ! モデルでクソバズって、イケメン俳優と付き合いまくって、ウチプロデュースのファッションブランドも出してさ!」


 そこまで叫ぶと、女神のウチはウチの目を見て爆笑し始めた。


「はぁ⁉︎ なにその幸せな予定ウケる! お前の人生そんな輝かねぇから!」

「は……え? そうなん?」

「もち。駐車場の石くらい輝かん」

「コンクリじゃん」


 ショックを受けるウチの前で、女神は指を折って数え始める。


「まずね〜、モデルになって調子乗った結果、単位足りなくて卒業で躓くっしょ」

「は? 待って。ウチ中卒になるん?」

「おん。んで、モデルだから学歴いらんしってイキってたんだけど、ふつーに同僚のヤリチンに引っかかってヤク漬けにされる」

「はぁ⁉︎ 嘘っしょ⁉︎」

「ガチ。エグチだよね〜。んでその後〜、金欲しさに色々やって、ブタ箱に突っ込まれて、もう帰ってくんなよって言われて速攻帰ってきて、仲良くなった罪人(つみんちゅ)からアチい投資の話教えてもらって、それに全財産賭けんだけどふつーにそれ詐欺で、借金抱えて返せなくなって、でも顔はワンチャンいいからっつってババアなのに海外の風俗に流されて性病にかかって死ぬ」

「もはやブラックホールじゃん……」

「だから、ここで死んどいて良かったっしょ。結果的に」


 女神が自分で納得するみたいに頷いて、「うん、良かった良かった」とか言ってる。


「いや、それでもこっちは急に死にたくなかったんだけど!」

「はぁ? やば、生に未練ありすぎじゃね?」

「当たり前じゃん! ていうか、ウチなら絶対輝く人生になっから」

「いや、だからその先がブラックホールだっつってんだけど」


 女神は、話の通じないヤツ、みたいな感じで眉上げてウチを見る。

 けど、そのまま顎に手を当てて空を睨み始めた。


「ん〜。まぁ、でもワンチャン生きたい説あるってことね?」

「説あるってか、そうだっつってんじゃん」

「んじゃ、復活させたげるわ」

「お……え、ガチ⁉︎ ガチで⁉︎」

「おん。ガチめに生き返らせるわ」

「マジか! ガチめに助かりすぎる! やっぱ女神尊いわ! 女神ちゃんしか勝たん!」

「うぇ〜い☆」


 喜ぶウチの前で、女神はギャルピースする。

 いや〜、神相手でもごねてみるもんだわ。

 やっぱウチがかわいいからかな。


「んじゃ、早速復活の儀式始めんね〜」

「あざまる水産〜」

「ちな、どこに飛ばされても文句言わんでね〜☆」

「りょ〜……は? 今なんて?」


 戸惑うウチを置き去りにして、女神は空を指差す。

 すると、空に広がってた雲が割れて、女神に一直線に光が集まってきた。


 急に、女神がめっちゃ光って、なんか神様みたいになる。


 女神はなんかエコーかかってる重々しい感じで叫んだ。


「「「ディオール・ジルスチュ・クロエ!」」」

「いやブランドの名前並べただけ……うッ!」


 ウチの意識は、またブレーカーみたいに強制的に落とされた。





 


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