第12話 村崎家虎、参上っ!
私の名前は、リン・クルルギ。
この村に捨てられた孤児──忌み子だ。
私の黒い髪は呪いの象徴。
都会では、そう言われているらしい。
けど、ここは都心から遠く離れた片田舎。
人手不足のここでは、忌み子の私でも貴重な労働力。
だから私は、畑仕事や料理を人一倍頑張るんだ!
そしたら、みんなも私を村の一員として受け入れてくれるからね!
ただ……町から取引先の人が来た時は家から出るなって言われてる。
なんでも、黒髪が仕事に関わってるって知られたら、買取価格がグッと下がるんだって。
村が貧乏になるのは私もイヤ。
ってことで、外から人が来た時は、私はいつも薄暗い家の中でジッと身を潜めている。
今も、そう。
どこかから来た鎧の人たちが外で話してる。
(はぁ……退屈だな……)
黒髪の私でさえこれだ。
黒髪よりもさらに忌まわしいとされている紫色の髪の人なんかがいたら、一体どうなっちゃうんだろうな……。
っていうか……。
ほんとにいるのかな? 紫髪の人なんて。
(それにしても……)
最近、多いなぁ。
外の人が来るの。
こないだは「近くで大きな戦いがあるから避難するように」とか言ってたけど……。
私には、他に行くところなんてどこにもない。
村の人もいっぱいよそに引っ越していったけど、私は……。
そういえば……。
大きな戦いってのはどうなったんだろ。
もう終わったのかな?
戦いが終わったらみんな戻ってくるといいなぁ。
にしても外の人、今日は話が長いなぁ。
一体なんの話してんだろ。
ひょいっ。
壁の隙間から外を覗いてみる。
(え、うそ……でしょ……?)
鎧の男たちが、村のみんなに斬りかかり始めた。
ダンッ!
扉が開けられる。
「リンッ! 逃げろっ!」
隣の家のおじさん。
「おじさん、一体なにが……」
ザンッ!
「ぐっ……あっ……!」
おじさんが崩れ落ちる。
その背後には、赤く濡れた剣を持った鎧の男が立っている。
「なぁんだ? 黒髪……? おいおい、勘弁してくれよ……。こんな忌み子がいたんじゃ、せっかく占領しても価値がだだ下がりだっつーの」
私は、とっさに手元にあった小麦粉を男の顔に投げつける。
「ぶぉふっ!」
震える足を叩く。
動け、動いて……私の足……!
プルプル震える足に力を込め、もがいている男の脇を駆け抜ける。
(ごめん、おじさん……! 私じゃ助けてあげられない……!)
誰か。
誰か呼ばないと。
私に出来る唯一のこと。
それは、「助けを呼ぶ」。
でも。
いったい誰を?
必死に走り抜ける。
変わり果てた村の様子が目に入る。
あぁ……!
なんでこんな……!
なんでなんでなんでなんで……!
誰か、誰か誰か誰か誰か……!
気がつくと私は、奇跡的に村から抜けられる位置にまでたどり着くことができていた。
あれ? これ、もしかして逃げられる……?
私一人だけ逃げる?
みんなを見捨てて?
そんな考えが頭をよぎる。
が、目に入った。
「ラキッ!」
九つ下の子供、ラキが鎧姿の男たちに囲まれているのが。
「うおっ! 黒髪じゃねぇか、不吉な!」
「マジかよ、縁起の悪いもん見ちまったぜ!」
「うわっ、誰が斬るんだよ、これ!」
ラキを抱きかかえる。
そうだ……どうせ私の行くところなんて、どこにもないんだ。
私を受け入れてくれた、この村で終わろう。
「オイッ! そいつはオレに斬らせろっ!」
さっき私が小麦粉を投げつけた男が追いついてきた。
兜を外し、怒りの表情を見せている。
おじさんを斬った男……。
私は、あいつに殺されるんだ……。
ごめんね、ラキ。
守ってあげられなくて。
でも大丈夫。
一緒にいこうね。
大丈夫、大丈夫だから……。
ラキの震え。
それが次第に私にも伝染してくる。
恐怖が体を覆っていく。
う、うぅ……!
しに……たくない……!
死にたくないっ!
いやぁ! 死にたくないっ!
「誰か! 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
そう叫んだ、瞬間。
目の前に、どこからともなく三人の人間(?)が姿を現した。
一人は、下着みたいな服しか身につけていないスタイルのいい金髪長身の女性。
一人は、艶やかな布地に身を包んだ、やはりスタイルのよい金髪長身の女獣人。
そして最後の一人は──。
紫髪!
黒髪の私よりも
この人なら、私の願いも聞いてくれるかも!
そう思った時、紫髪の男が叫んだ。
「推せるッッッ!」
おせ……?
意味は分からないけど、急に現れたこの人たちが私の最後の希望であることに変わりはない。
私は、私の全てを込めて叫んだ。
「助けて!」
すると、即座に。
「当たり前だッ!」
と、あたりをビリビリと震わす大声で返事が返ってきた。
「だ、誰だてめぇらっ! 一体どこから出てきやがった! しかも、紫髪だとぉ……!?」
紫髪の人が静かに答える。
「我々は、ワールドカオスから来た」
「わ、ワールドカオスだぁ?」
「ああ、そして私……いや、
「お、おしだぁ……!?」
それが、私リン・クルルギと、紫の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます