第11話 襲われてる村を救おう!

 顔の前で宙に浮いたマップ画面。

 魔眼城を中心に黄色い点や灰色の点がチラホラと記されている。

 なんとなく指で触って拡大してみる。


 スイッ。


 拡大できた!

 すごいな、魔法!

 すごいな、魔眼城!

 ふむふむ、どうやらスマホ感覚で操作できるらしい。

 極限まで拡大してみると、実際の外の画面に移り変わる。

 しばらく見ていると、どうやら黄色い点はアイテムを表しているらしいことがわかった。

 アイテム──地面に飲まれた人たちの装備品。


「マンゲよ、部下をアイテムの回収に向かわせろ」


「ハッ!」


 マンゲが去ってしばらくすると、マップの上にわらわらと青い点が湧いてきた。

 どうやら味方は青い点で記されるらしい。

 骨たちが、えっちらおっちらと地面を掘り返して装備を持ち帰ってくるのをマップでチェック。


(おお~、なんか働きアリがエサを巣に持って帰ってきてるみたいでかわいいぞ)


 なんだかちょっとだけ骨たちに愛着が湧く。

 

(そういや、こっちの灰色のはなんだろう。やけに固まってるけど……)


 スイスーイと拡大してみる。

 お、人じゃ~ん。

 いっぱいいる。

 村?

 あれ?

 っていうか……。

 なんか、戦争してない?


 声は聞こえないが、ワーワーキャキャーと村人が逃げ惑い、甲冑マンたちが次々と人々を背後から斬り捨てていっている。

 これは戦争っていうか──虐殺?


「うふふ……主様ぁ。人間ってほんっと愚かですねぇ。自分たちでこんなに殺し合って。勝手に自分たちから滅亡に近づいてくれるのですから、まったく楽なものですわぁ」


 オレにしだれかかった始祖ヴァンパイアのマダガスカルが、まるで人間を見下したかのように吐き捨てる。

 っていうか……マダガスカル。

 やっぱ名前長いな、こいつ。


「おい、マダガスカル」


「はぁい? なんでしょうか、主様ぁ?」


「お前、名前長いから今度からダガーって呼ぶわ」


「っ! ……かしこまりましたわぁ。フルネームがマダガスカルで、ニックネームがダガーですわねぇ。夜伽よとぎの際はどちらの名前で呼んでいただいても構いませんわぁ。あ、でもこれで二度楽しめますわねぇ、うふふ……」


 夜伽!

 あるの!? そんなシステム!?

 言葉の孕む淫らな雰囲気に微かに胸をときめかせていると。


「主様」


 神妙な面持ちでカラ狐が声をかけてきた。


「なんだ?」


「僭越ながら申し上げます。異世界への先兵として、この世界の住人を送る件なのですが……このまま村が滅んでしまっては、貴重な奴隷が減ってしまうかと」


 なるほど。

 人口イコール国力だからな。

 村人にしてもこのまま殺されるより、とりあえず奴隷としてでも生きてたほうがいいだろう。

 ……え、いいよね?

 ま、そこはあとから調整すればいいか。

 とりあえずは人助けといきますか。

 どうせ、なにしてもオレは死なないことが確定してるわけだし!


「ダガー、カラ狐」


『ハッ!』


「貴様らの力、私に見せてみよ。これより奴隷どもを救いに行く!」


『ハッ!』


 ダガーとカラ狐はニヤリとした笑みを見せ、オレの前にひざまずく。

 その後、魔眼城の感知できる範囲であればテレポート出来るらしいことを聞く。

 ってことで、例によって古代文字の上にスタンドアップ。

 そして唱えた言葉は──。


『東京テレポート駅』


 日本最大のアイドルフェス『FIF』に行く時に使う駅だ。

 いや、だってさ!

 仕方ないじゃん!

 これくらいしかテレポート関連の言葉思い浮かばなかったんだもん!

 でも、どうやらこれで正解だった模様。

 フォン──と光に包まれ移動した先。

 村のはずれで出会ったのは。


「きゃぁっ!」


 黒髪、色白、低身長、ぱっりちお目々。

 アイドルグループ『27時のエスカレーション』のセンター久留里くるりりんちゃんに瓜二つの女の子だった。


(うおおおおおお! これは……! お、推せるぅぅぅ!!)

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