第20話 課外授業

「さて。皆既に知っていると思うが、来週に三日間の課外授業を行う。課外授業では郊外へ行き、植物採集や釣り、キャンプなどをとり行う。まあ1年生は、夜は建物に泊まれるので安心するように。」






 ゲオルグ先生の言葉に教室中が沸き立つ。

 外での2泊3日の課外授業!


 生徒達から期待と不安が入り混じった歓声があがる。


リラリナ学園で各学年1度ずつある課外授業。これを楽しみにしている生徒は多い。





 貴族の令息や令嬢の中には、敷地の庭を散策する程度で、外に出るとしてもガーデンパーティくらいがせいぜいという者も多い。

 王都屋敷で暮らしているような貴族は特に。

 そんな貴族の子ども達に、最低限の生活の知識を身につけさせるのが目的らしい。

 学年があがるにつれて、年々内容がハードになっていくらしいが、1年生は夜は建物に泊まれるので、キャンプの体験といったところか。



 それでも不安を感じるような声があがっているが、中には、田舎の領地で良く狩りをしていたのなどという得意げな声も混じっている。



「課外授業にいくまでに、これから火の起こし方、釣り具の付け方、キャンプ地付近の主な果実・植物などを一通り教える。しかし教室で座って習っただけで、実際に出来るようになる者はいない。各自家でもしっかり練習しておくように。」




 かく言うナタリーは、屋敷から殆ど出たことがないご令嬢と言っていいだろう。

 労働に忙殺されていた時期があるので、箱入り令嬢とはちょっと違う気もするが。

 火起こしや料理は自信があるが、釣りなど外での活動はやったことがない。



 よし!練習しておこう。

 ナタリーは思った。





「1年生は3年生と合同で行う。3年生と混合の班を組むため、3年のリーダーの話をよく聞くように。・・・・・・・ちなみに2年生は4年生と組んで、キャンプの難易度は高くなる。5・6年生になると野営だ。」




「ゲオルグせんせー。班はどうやって分けるのですか?」

 質問したのはネイサンだ。

 入学当初は成績が振るわなかったが、今ではゲオルグ先生にどんどん質問して授業を盛り上げてくれている。


 ゲオルグ先生もネイサンの積極的な姿勢に、いつも嬉しそうにしている。

 きっと次のテストでは順位を上げてくるだろう。





「これから発表するが、学年始めにやった学力テストの順番によって振り分けている。しかし課外授業に学業の成績は全く関係ない。毎年成績上位の者ほど、キャンプに手間取ったりしているな。」



 そう言いながら、既に書いてきてあった大きな紙を広げるゲオルグ先生。

 教室の前にある大きな黒板にその紙が貼られる。




 教室中に歓声と悲鳴が湧き上がった。




 なるほど。

 1年生Aクラスの19名と、3年生Aクラスの20名を混ぜて、8つの班に分けるのか。

 1つの班につき、班員は約5名だ。



 1年生のテスト1位の生徒が1班、2位が2班、3位が3班・・・・・と続き8位が8班。

 9位は逆に8班から、10位が7班、11位の生徒が6班・・・と振り分けられているようだ。




 ミハイル様が1位で1班。私は2班。アレン様は3班でジャックは5班。

 全員バラバラに離れてしまった。


 私と同じ2班なのは・・・やった!さっき領地で野営にも慣れていると言っていた、レオだ。

 あともう一人、18位の子は・・・リリィね。





 3年生のメンバーはと見ると。


 3年生Aクラス2位――――――ファルコ様だ。

 ファルコ・リヴォフ。ミハイル王子の従兄。

 



うん!嬉しい。


 ナタリーはファルコ・リヴォフに好感を抱いていた。

 先日少し揉めてしまったが、今まで社交界で見かけたファルコ様は、いつもは理性的で、とても努力家な方なのだ。




 3年生のAクラスは、平民が半数以上らしいけれど、2班の最後のもう一人も、貴族の男性のようだ。


 ヒューゴというらしい。






 ミハイル様の1班には、3年生1位、ナタリー憧れのアンネ先輩がいる。


 良いなぁ。

 ネイサンも17位で1班か。

 何だか楽しそうな班だ。




 初めての課外授業を思って、胸を躍らせるナタリーだった。








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