第57話 愛しいキミへ


 ……無い。


 無い。


 何も無い――


 ただ、オレは色のない空間を、漂っている。


 今が、どこで。

 なにが、いつか。


 自分と他人を分け隔てるものはなく、物質との境もない。


 混沌とした原初の世界。


 その殺伐とした空間にオレはいた。

 燐との思い出だけが、頭を何度も巡っていく。


 オレが忘れたはずの、燐と過ごしてきた全ての出来事が、世界いっぱいに広がっていた。

 雪合戦、花見、スイカ割りに花火、そして文化祭。

 他にも様々なことを経験してきた。


 燐の言う通り、オレたちは沢山の思い出を築いてきたんだ。


 知らず知らずのうちに、彼女に残酷な仕打ちをしていたことも沢山あった。

 彼女を無理に笑わせたことも、数知れない。

 しかし、それ以上にこの世界は幸せに満ちていた。


 なんだか、全部夢だったみたいだ……


 オレは、存在しないはずの左手を、遠くへ伸ばそうとする。

 すると――誰かの手に握りしめられた気がした。


 確かめるように、強く握り返す。

 柔らかく、傷ついた、小さな手のひら。


 忘れることで、悲しみが終わるなら、すべて忘れてほしい……


 それが、ただひとつの願いだった。


 愛しいキミへ。


 どうか、オレがいない世界でも幸せに……



―― 第五章 銀髪美少女よ、頼むから離さないで   了 ――



――――――――――――――――――

【大事なお願い】


ここまで読んでくださってありがとうございます……!


この作品は、カクヨムコン応募作品です。

受賞できるとは考えていません。

ただ、一度でいいので、読者選考というものだけは抜けてみたくって……


もし少しでも、面白かった! 続きが気になる! 楽しかった!

と思っていただけましたら、


ぜひ、下にある【星☆評価】でエールをください……


現時点の評価で構いません。

1つ押していただけるだけで大変ありがたいです。

入れて頂けたら【一族金運上昇】の舞を舞わせていただきます……

(読者選考は2/8までなので、それまでに何卒……!)


――――――――――――――――――


次回より、終章です。

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