第17話 いい人止まり、幼馴染との過去を語る②


 * * * 


 ……小学生の頃のオレは、いわゆるいじめられっ子だった。

 原因は、小1のときに顔に負った火傷のせい。

 しかも当時は引っ込み思案だったから、その分余計いじめられた。

 

 学校に居場所はなかった。

 それでも、灯里だけはずっと一緒にいてくれた。

 あのときのオレには、灯里だけが世界のすべてだった。


 ……オレは、アイツに恩があるんだよ。

 

 ただ、高学年になるころには顔の傷は目立たなくなって、状況がガラッと変わった。

 一番のコンプレックスが消えたおかげで、オレは自信を持てるようになって、友達ができるようになった。いじめもパッタリなくなった。

 

 ただ、状況が一変したのは、オレだけじゃなくてな。

 灯里はそのころ、親父さんを亡くした。

 

 灯里は、人が変わったみたいに部屋でふさぎ込んだ。

 学校も不登校だ。

 代わりに、放課後は頻繁にオレを家に呼び出しすようになった。


 最初こそ、「次はオレが支えないと!」って、オレもすぐに飛んでいって話を聞くようにしてた。

 けど、それがあまりに毎日だったから、耐えられなくなってきた。

 初めて友達ができたもんだから、遊びに行くのが我慢できなかったんだよ。


 ……ただのバカガキだ。

 

 小六の一月三十日。

 記録的豪雪っつって、雪がドカドカ降った日だ。よく覚えてる。


 雪なんて、小学生にとってはお祭りみたいなもんだろ?

 だから、オレも友達と遊ぶぞって思ってたときに、灯里から電話がかかってきた。


「今すぐ来て」


 ってな。

 

 遊びの直前で止められて、むかっ腹だった。

 それで、無視することにした。


 ちょうどそのころ、灯里はインフルエンザにかかってて、なかなか治らなかった。

 でも、熱は下がってきたっておばさん言ってたし、まぁ大丈夫だろって思い込むことにしたんだ。

 

 遊んでるうちに、灯里のことは頭からすっかり抜けた。

 次に思い出したのは、ビショビショになって帰路についたときだ。


 空からは毛玉みたいな雪がまた降り始めてて。

 まるで雪国みたいになった町からは音が消えて、別世界に来たみたいで不安になった。

 

 オレは、やっぱり心配になって、アイツの住んでる団地に行ったんだ。

 罪悪感で、なんとなく家まで行くことはできなくて、駐車場からアイツの部屋を見上げた。


 そしたら、降ってきたんだ、灯里が。雪と一緒に。


 * * * 


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