第12話 ユニークスキル【模倣】
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古椎唯奈視点
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なんで、私の部屋に豊島先輩が……?
「悪いな……。ちょっとお邪魔させてもらうぜ」
そう言って豊島先輩は部屋の扉を閉めると、私の方にゆっくりと近づいてきた。その時の彼の顔は、飢えた狼のような顔をしていた。
私は身の危険を感じ、四肢を拘束している鎖を振り払おうとする。しかし、鎖は動かすことはできるものの、どんなに力を込めても拘束を解くことはできなかった。
「どんなに暴れても無駄だぜ。それは拘束魔法のバインド……相手の自由を奪う魔法だ」
豊島先輩のクラスは黒魔術師。私が専門とする味方をサポートする白魔術とは違い、相手が不利になるような黒魔術を専門とするクラス。
バインドといった拘束魔法も使えるのだ。
「離してください!」
「”こと”が終わったらな」
「”こと”……?」
最初は豊島先輩の発言の意図がわからなかったが、男が夜這いして、女を拘束してやることなんて一つしかない。
「……最低。無理やり女の子を犯そうだなんて。相当溜まってるんですね」
「当たり前だろ。日本にいたときは毎日のようにやってたんだ。異世界に来てからはご無沙汰だからなぁ」
性欲に従順な男だ。豊島先輩も富樫先輩ほどではないにしろ、容姿端麗でスポーツ万能だ。その日、ヤり捨てるだけの女子を摑まえることなんて造作もないのかもしれない。
ご無沙汰って言ったって、異世界に来て3日しかたっていない。どれだけ性欲モンスターなのか、この男は。
ついに、彼は無理やり女の子を溜まっていたのだ。
「……犯罪ですよ。特に性犯罪は重罪です」
「おいおい、ここは異世界だぜ~? 日本の法律が適応されるわけねぇじゃねーか」
確かにそうかもしれない。この異世界での強姦がどれほどの罪なのかはわからないし、王国に被害を訴えても豊島先輩を罰してくれる保証はないのだ。
「……何で私を襲うんですか?」
「そりゃ、この城に若い女はお前しかいないからな」
そう言って私の横に来ると、しゃがんで私の顔をまじまじと眺める。
「こうしてみるとやっぱり美人だなぁ……古椎唯奈。あの梓馬が惚れ込むだけのことはある」
「……友人の好きな人に手を出している自覚はあるんですか?」
「あぁ、梓馬の女に手を出すのは初めてじゃないからな。いや、まだアイツの女じゃなかっただっけ?」
「……ほんと、最低……」
こんな下郎に純潔を許してやるほど、私は寛容ではない。
私は助けを呼ぶために大声を出そうとする。ここは王国城の一室。城を守る騎士団や、家事を任された下人など多くの人がいる。
そんな中で叫べば、誰かは私の声に気づいてくれるはずだ。その場合は、豊島先輩の狼藉が見逃されることはない。
「おっと危ない。サイレント」
声が出そうになったその瞬間、私の声門が突然塞がり、一切声が出なくなってしまった。私は困惑して悶えるが、その時に声が漏れることもなかった。
一体どういうことだろう。まさか、恐怖で声が出なくなってしまったのだろうか。
「これは沈黙魔法のサイレント。相手の発声を奪う魔法だ」
「……!?」
私がどれだけ必死に大声を出そうとしても、豊島先輩のかけたサイレントに打ち勝つことはできなかった。
そもそも、なんでコイツはこんな強姦をするために適した黒魔法をたくさん覚えているのだろうか。
私たち強いユニークスキルを有している ”勇者” 候補とはいえ、たかがレベルは1か2。そんな低レベルから魔法をたくさん覚えられるほど、経験値は獲得していないはず。
私だって、回復魔法のヒールや、味方や自分の素早さを上げる高速魔法のラピッドの2種類の白魔法しか習得できてない。
「どうしてこんなにたくさんの魔法を覚えているのか、っていう顔だな。なら教えてやるよ。ステータス、オープン」
そう言って豊島先輩は、私に自分のステータス画面を見せつけた。
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レンヤ・トヨシマ
Lv2 クラス 黒魔術師
HP 210/210
MP 250/270
物攻 9
物防 16
魔攻 36
魔防 34
敏捷 22
ユニークスキル【模倣】
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「俺のユニークスキル【模倣】は、一度見た魔法を習得できるものだ。バインドもサイレントも、騎士団のやつらから一度見せてもらった魔法だ」
なるほど、ならばレベル2でもこんな多種多様な黒魔法を習得しているのにも説明がつく。なんて強いユニークスキルなのだろうか。
豊島先輩と比較すると、私のユニークスキル【逆境】は非常に残念な性能をしているように思える。鈴原先輩の【譲渡】なんて、もってのほかだ。
「お前は白魔術師って聞いてたから、バインドに対抗できる白魔法を覚えてたらどうしようかと思っていたが……。ただの杞憂だったようだ」
「……!」
豊島先輩の言葉に背筋が凍る。
今までは助けを呼ぶことできるという安心感から、気丈にふるまえていた。しかし、頼みの綱である声も封印された。四肢を拘束された私は、恐怖に身を悶えさせるしかなかった。
私の目じりに涙がたまる。
「泣くなよ。奇麗なお顔が台無しだ」
豊島先輩が指で私の涙を拭いて、その指に着いた涙を舐めた。……気持ち悪い。
「そろそろ、お楽しみといこうか……」
そう言って私の着ている服に手をかける。いよいよ、私は犯されようとしている。
私はまだ15歳のピチピチの女子高生。もちろん、性交の経験もない。それなのにこのような形で、好きでもない男によって貞操を奪われようとしている。
そんなの絶対に嫌だ! 誰か助けて!
しかし、誰がこの窮地から私を救ってくれるのだろうか。そう考えたとき、一人の男の存在が私の頭の中をよぎった。
もう、この異世界で私が頼れる人なんて一人しかいない。
私よりチビで、弱くて、意気地なしで……。でも、一緒にいると元気が湧いてい
る不思議な存在……。
私は声が出せない中、あの小さな背中を思い浮かべて、必死に願った。
助けて……。鈴原先輩……。
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