第24話 取り調べ
その名前に、
「あ、
「その可能性は十分にあるな。くそ、あいつがお前に近づいていたのも、犯人探しがどこまで進んでいるか情報を得るためだったのか」
道理でいきなり現れて、妙に近い距離感で絡んできたわけだ。夏晴亮はようやく納得した。
「では、すぐに彼を呼びましょう」
「いや、念のため術師を二名程連れてきてからだ。このことを指摘されて、何をしでかすか分かったものではない」
「第二皇子と側妃にはお伝えしますか?」
「まだいい。任明願が自白してからだ」
もし、第二皇子の指示によるものであったら、知らせた時点で何らかの対応をされるか、逃亡する可能性もある。外堀を埋めてから慎重に行動した方がいい。
全員で別室に移る。ここは罪人を尋問する間だそうで、今から部屋に結界を張ると術師が言っていた。
「結界を張れば、一度入った者は結界が解かれるまで退室することは出来ません」
にっこりと怖いことを言われ、夏晴亮は恐怖し、感心した。すると、
「おや、さすがは高等精霊。主が命じずとも、自ら守りに入るとは」
「阿雨、こちらは術師の方々よ。味方だから、大人しくしていてね」
『くぅん』
「おやおや」
間もなくして、任明願を迎えにいっていた術師が戻ってきた。もちろん、彼を連れて。
「何故ここに呼ばれたか分かるな?」
任明願がそっぽを向いて言う。
「いいえ」
これでは自白しているようなものだ。馬宰相が金箔が入った皿を彼に見せる。
「これが何か分かりますか」
「……黙秘しても?」
「結構ですが、無駄です。どこから仕入れているかはすでに調査済ですから」
「そうですか」
ため息を吐いた任明願が端にいた夏晴亮を見遣る。夏晴亮は背筋を伸ばした。
「女神。貴方にバレたくなくて、どうにか犯人探しの任務から外したかったのですが。残念です」
「任先輩……」
二人の間に第一皇子が割って入る。
「任明願。率直に聞く。これは子風から依頼されたことか?」
その問いに、今まで静かだった声が大きく乱れた。
「違います!」
一歩前に出た任明願が術師に止められる。任明願は言った。
「子風様は決して関係ありません。私の独断でやったことです。彼は何も知らない」
「では何故このようなことを?」
聞いているこちらの胃に穴が開きそうだ。夏晴亮が硬い表情で行く末を見守る。
「それは……貴方の具合が悪くなれば、子風様の評価も少しは上がるのではないかと考えたからです」
──ん?
評価とは?
毒事件にしてはなんだか目標が低い気がする。夏晴亮が首を傾げる横で、任深持が納得したように頷いた。
「やはりな。そんなところだろうと思った」
「毒といっても、お腹を下したり体調を崩す程度ですからね。これが大量だったらまた違いますが」
「えっ」
驚いているのは夏晴亮だけだった。周りを見渡しても、彼女以外は呆れ顔ばかりで。
「死なない毒だったのですか?」
「ああ。だから犯人がはっきりするまでじっくり待つことにした。こちらには毒見師もいて安全だからな」
「そうなのですか」
よかった。宮廷内に任深持を殺そうとする者はいなかったのだ。しかし、中途半端な毒をもって自身を危険な位置に落とすとは、上司に花を持たせたいにしては待っている結果が重すぎる。任明願が肩を落とした。
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