月野の番
第26話 「楽しみにしてるね」
水族館ではサトノン君と喧嘩をしてしまうという問題もあったが、最終的には全てが丸く収まったので気持ちよく休日を過ごすことができた。
ある程度探偵活動もできたし、休息を取ることもできたので、週始めから気持ちよく探偵活動を再開できると思っていたのだが……。
「今日は紅茶かー。いやほんとお茶も紅茶も淹れるの上手いね」
「ふっふっふー。探偵の助手やってたらこんなことまでできるようになっちゃったんだよねー。私ってばやっぱり天才?」
「だから何でまた普通に月野がいるんだよ⁉︎」
相変わらず月野は探偵部屋へとやってきてサトノン君と談笑している。
「そんなことばっか言ってるから友達少ないんだよって前も言ったよね? 邪魔しないならいてもいいって言ったよね?」
「『邪魔するなよ』とはいったけど、いてもいいとは言ってないぞ」
「細かいことは気にしない」
「いいじゃん。今はそんなに仕事も無いんだしさ」
普段と比べて仕事の量が少ないのは事実だが、かと言って仕事がないわけではない。
ただ、以前よりも早く仕事をこなせるようになり時間ができているのも事実だ。
以前より仕事を早くこなせるようになったのは、蒲生と山際先輩の働きのおかげである。
俺は仕事を頼もうと思っていないのだが『何でもやります! なんか無いっすか⁉︎』としつこく言ってくるのである程度の仕事を任せていたら時間ができたのだ。
しかも依頼した仕事は毎回完璧にこなしてくるので、継続して依頼している。
「う゛っ……。まあそうだけど」
「じゃあみんなでゆっくりお茶しようよっ--て言った側からトイレ行きたくなっちゃったからトイレ行ってくるね」
そう言って、サトノン君は探偵部屋を出て行って俺は月野と二人きりになった。
……あれ、水族館でも二人きりになったことはあったし、その時はそんなに意識しなかったが、なぜか今は意識してしまい異常に緊張してしまっている。
探偵部屋は狭くて尚且つ密室なので、俺が月野と二人きりという状況をやたらと意識してしまうのはそんな状況もあってのことだろう。
「ねぇ、さっき聡乃も言ってたけど今そんなに忙しくないんでしょ?」
「い、忙しくないって言ったってある程度仕事はあるけど--」
「見栄張らないの」
「……はい、すいません」
「忙しくないならさ、この後ちょっと二人で遊ばない?」
「え、二人で?」
「そっ、二人で」
なぜ月野が俺と二人きりで遊びたがるんだ? それこそサトノン君だっているんだし、三人でも……。
「サ、サトノン君は?」
「さっき誘ったんだけどなんか用事あるみたいでさ」
サトノン君に用事があるとなれば月野が俺を二人で遊ぼうと誘うのも理解できる。
とはいえ、サトノン君に用事があった時点で俺のことを誘わないという選択肢も出てきたはずだ。
その選択肢をなぜ選ばなかったのかは疑問ではある。
「そ、そうなのか」
「うん。大丈夫そ?」
「まあそあだな。とかに予定は無いし大丈夫だ」
「じゃあそういうことで、楽しみにしてるね」
そう言いながら月野が見せた笑顔は、本当に俺との遊びを心待ちにしているようで、俺の胸は高鳴る。
今はとにかく月野との遊びが水族館のときのような事件で台無しにならないことを願うばかりである。
【投稿停止】学校1の美少女は、自称探偵で冴えない俺を調査するらしい 穂村大樹(ほむら だいじゅ) @homhom_d
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